“グローバル化”を疑う視点 ― 日本の産業はどこで道を誤ったのか ― コスト最優先の時代に、私たちが失ったもの ―

2026年02月08日

私は昭和45年生まれです。物心ついた頃から、両親、特に母親から繰り返し言われてきた言葉があります。
「もっとグローバルに物を見ないとだめだ」。

当時の日本は経済大国として世界の注目を集めており、「内向きであること」はどこか時代遅れのように語られていました。海外に目を向け、世界基準で考えることが正しい――そんな価値観の中で育った世代だと思います。

しかし、バブル崩壊以降の日本の産業の歩みを振り返るとき、ふと立ち止まって考えたくなるのです。
私たちは「グローバル」という言葉を、あまりにも疑わずに受け入れてこなかったのではないかと。

本記事は、グローバル化そのものを否定するものではありません。ただ、日本の産業が本来持っていた強みと、それが失われていった背景について、一つの視点から考えてみたいと思います。

目次

  1. 日本が経済大国になれた本当の理由
  2. 技術を育てた「日本語でのコミュニケーション」
  3. グローバル化とコスト最優先という判断
  4. 「品質」で勝っていた日本が「価格」で負け始めた理由
  5. 日本製家電の実体験から感じたこと
  6. コスパ重視の先に残るもの、失われるもの
  7. おわりに ― いま必要な「立ち止まる視点」

1. 日本が経済大国になれた本当の理由

戦後、日本は驚異的なスピードで復興し、やがて世界有数の経済大国となりました。その理由として、「勤勉さ」や「高い技術力」が挙げられることが多いと思います。

ただ、冷静に振り返ると、日本の技術の多くは海外由来でした。重要だったのは、それらをそのまま使うのではなく、日本の現場で改良を重ね、日本独自の技術として育ててきた点にあります。

つまり、日本の強みは「ゼロから生み出す力」よりも、技術を深め、磨き上げる力にあったのではないでしょうか。

2. 技術を育てた「日本語でのコミュニケーション」

その力を支えていた大きな要素が、日本語によるコミュニケーションだったと私は考えています。

現場では、数値やマニュアルだけでは表せない微妙な感覚や違和感が共有されていました。「もう少し」「なんとなく違う」といった曖昧な表現が通じる環境が、改良や工夫を生み出していたのです。

日本語は単なる言語ではなく、暗黙知を伝え、技術を蓄積するための基盤でした。この点は、後になって振り返るほど、その重要性を実感します。

3. グローバル化とコスト最優先という判断

バブル崩壊後、日本企業は厳しい経営判断を迫られました。利益を確保するため、製造拠点を海外に移す動きが加速します。人件費や原価を考えれば、合理的な判断だったと言えるでしょう。

しかし、生産拠点が海外に移れば、共通言語は英語や現地語になります。細かな指示や改善点を、日本国内と同じ密度で共有することは難しくなります。
その結果、意図せずとも技術やノウハウは外へ流れ、国内に蓄積されにくくなっていきました。

これは誰かの失策というより、コストを最優先した結果として起きた構造的な変化だったのだと思います。

4. 「品質」で勝っていた日本が「価格」で負け始めた理由

かつて日本の製品は、「壊れにくく、長く使える」ことで高い評価を受けていました。日本の優位性は明らかに「品質」にありました。

ところが、グローバル市場では品質よりも価格が比較されやすくなります。結果として、日本は本来得意ではない「価格競争」という土俵で戦うことになりました。

品質を守れば価格で負け、価格を下げれば品質が揺らぐ。こうしたジレンマの中で、日本のものづくりは次第に方向性を見失っていったように感じます。

5. 日本製家電の実体験から感じたこと

ここで、私自身の経験を一つ紹介したいと思います。

私はオーストラリア留学を終えて、2003年に日本へ帰国しました。その際、新生活にあたって、日本製の洗濯機と電子レンジを購入しました。当時は「日本製であれば長く使えるだろう」という、ごく自然な感覚での選択だったと思います。

その後、洗濯機は約20年使い続けた後、2年前に故障しました。一方で、同じ時期に購入した電子レンジは、現在も問題なく稼働しています
電子レンジは、20年以上にわたって日常生活を支え続けてくれていることになります。

特定の製品やメーカーを評価・批判する意図はありません。ただ、この経験を通じて、「コスト」や「効率」といった指標だけでは測れない価値が、確かに存在すると感じました。

6. コスパ重視の先に残るもの、失われるもの

「コスパ」という言葉は便利です。しかし、それだけを判断基準にすると、長期的に失われるものもあります。
技術の蓄積、人材の育成、ものづくりへの誇り、そして長く使う文化。

司法書士の業務においても、短期的な合理性だけで制度や対策を選ぶと、後になって問題が顕在化することがあります。相続や事業承継も同様で、「今の効率」だけでは測れない価値が必ず存在します。

7. おわりに ― いま必要な「立ち止まる視点」

グローバル化は避けられませんし、多くの恩恵ももたらしました。ただ、それを無条件に正解とする時代は、すでに終わりつつあるのではないでしょうか。

本当に守るべきものは何か。
数字では測れない価値を、私たちはどこまで意識できているのか。

一度立ち止まり、考えること。
それこそが、これからの日本にとって最も重要な視点なのかもしれません。

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