相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
【第3回】銀行名が違う!? 商号変更・業務承継がある場合の「変更証明書」

抵当権抹消登記の書類を確認していると、こんな場面に出会うことがあります。
「登記簿に書かれている銀行名と、
今の銀行の名前が違う…」
住宅ローンは20年、30年という長い期間にわたるものです。
その間に、金融機関の名前が変わったり、組織が再編されたりすることは珍しくありません。
しかし、登記の世界では
「名前が違う」というだけで、そのままでは抹消できない
という問題が生じます。
今回は、金融機関の商号変更や業務承継がある場合に必要となる
**「変更証明書」**の実務について解説します。
目次
- 登記簿の金融機関名が違うという問題
- なぜ名前が違うと抹消できないのか
- よくある商号変更の例
- 政府系金融機関の業務承継のケース
- 変更証明書とは何か
- 会社法人等番号による添付省略
- 古い抵当権ほど注意が必要
1.登記簿の金融機関名が違うという問題

抵当権抹消登記では、
登記簿に記載されている抵当権者と、
抹消を承諾している金融機関が同一であることが前提になります。
ところが、実務では次のようなケースがよくあります。
- 登記簿:○○相互銀行
- 現在の金融機関:○○銀行
あるいは、有名なケースでは
- 登記簿:住宅金融公庫
- 現在の金融機関:住宅金融支援機構
といった具合に、
登記簿の名前と現在の名前が一致しないことがあります。
この状態では、法務局から見ると、
「本当に同じ権利者なのか?」
という疑問が残ります。
そのため、そのままでは抵当権抹消登記を受け付けてもらえません。
2.なぜ名前が違うと抹消できないのか

登記は、形式的・画一的な制度です。
法務局は、
- この人(法人)が
- この権利を持っている
ということを、登記簿の記載に基づいて判断します。
そのため、
- 登記簿上の抵当権者:A
- 抹消書類の発行者:B
となっている場合、
AとBが同一人物(法人)であることを証明しなければならない
というルールになっています。
この「同一性の証明」に使われるのが、
変更証明書です。
3.よくある商号変更の例

特に多いのが、金融制度の変化に伴う商号変更です。
代表的な例としては、
相互銀行 → 普通銀行
という変更があります。
かつては「○○相互銀行」という名称だった金融機関が、
制度改正により普通銀行へ移行し、
「○○銀行」へ商号変更
しているケースです。
登記簿には、当時の名称である
「○○相互銀行」と記載されているため、
現在の「○○銀行」が抹消書類を出しても、
そのままでは同一性が確認できません。
4.政府系金融機関の業務承継のケース
もう一つ、実務でよく見かけるのが
政府系金融機関の再編による業務承継です。
代表的な例が、
- 住宅金融公庫
↓ - 独立行政法人 住宅金融支援機構
という流れです。
住宅金融公庫は廃止され、
その業務を住宅金融支援機構が引き継いでいます。
しかし、登記簿上の抵当権者は
あくまで「住宅金融公庫」と記載されています。
そのため、
「住宅金融支援機構が、
住宅金融公庫の権利を承継している」
という事実を証明する必要があります。
この場合も、変更証明書が必要になります。
5.変更証明書とは何か

変更証明書とは、
登記簿上の金融機関と、現在の金融機関が同一であることを証明する書類
のことです。
通常は、次の書類を利用します。
会社の登記事項証明書(登記簿謄本)
これにより、
- 旧商号
- 商号変更の履歴
- 合併の経緯
- 現在の商号
などが確認できます。
その結果、
「登記簿に記載された金融機関と、
現在の金融機関は同一である」
ということが証明されます。
6.会社法人等番号による添付省略
金融機関が法人である場合は、
会社法人等番号
を申請書に記載することで、
変更証明書の添付を省略することができます。
この番号をもとに、
法務局が商業登記を確認できるためです。
ただし、ここでも重要な実務上の注意点があります。
それは、
実際に添付を省略しても、
添付書類欄には「変更証明書」と記載が必要
という点です。
この記載を忘れると、
補正の対象になる可能性があります。
7.古い抵当権ほど注意が必要
金融機関の変更が問題になるのは、
主に古い抵当権です。
例えば、
- 昭和時代に設定された抵当権
- 30年以上前の住宅ローン
などでは、
- 相互銀行時代の名称
- すでに存在しない金融機関名
が登記簿に残っていることも珍しくありません。
そのため、
「書類は揃っているはずなのに、
なぜか抹消登記が進まない」
というケースの多くは、
この金融機関の変更関係が原因になっています。
抵当権抹消登記は単純な手続きと思われがちですが、
こうした歴史的な経緯が絡むと、
一気に実務が複雑になることもあります。

次回予告
第4回では、
「所有者が亡くなっていた場合、どうなるのか?」
という、抵当権抹消登記で非常によく起こる問題について、
相続登記との関係を中心に解説します。
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