①受遺者と受贈者がある場合
(受遺者:遺言で遺産を受けた場合、受贈者:生前に贈与を受けた場合)
先に受遺者が負担することとなります。(民法1047条第1項第1号)
➁受遺者が複数ある場合又は、贈与者が複数あるときで贈与が同時に行われた場合
原則:受遺者。受贈者は遺贈・贈与の目的の価額の割合に応じて負担
例外:遺言者がその遺言に別段の意思表示をした時は、その意思に従う
(民法1047条第1項第2号)
③受贈者が複数あるとき(上記➁を除く)
後の受贈者から順次前の受贈者が負担(民法1047条第1項第3号)
※贈与を先にした場合、明確にならない場合があるので、遺贈が先の順位となります。
遺贈は遺言者の死亡により効力を発生するので同時になり、贈与も同時なら価額の割合になります。贈与の場合は、前後関係があるので新しい後の贈与から順番に負担することがルールとして定められています。
※受遺者又は受贈者が無資力(請求時に財産がない状態)で遺留分権利者が満足を得ることができない(金銭債権を回収できない)場合の損失の負担は、遺留分権利者が負担することになります。(民法1047条第4項)つまり、請求しても請求先が無資力なら、次の順位の受遺者、受贈者が負担するのではなく、遺留分権利者自身が負担することになるということです。
3.遺留分侵害額請求権の効力の範囲
①金銭債権の発生(民法1046条第1項)
※金銭債権が発生するものの、いきなり受遺者に支払えと請求しても、遺贈されたものが不動産などすぐに金銭に変換できないもので、受遺者に資力が乏しかった場合には、裁判所は、受遺者又は受贈者の請求により、金銭支払債務の支払いに係る期限の許与をすることができます。(民法1047条第5項)
➁受遺者又は受贈者が、第三者弁済等により遺留分権利者が負担すべき相続債務を消滅させた場合、遺留分権利者に対する意思表示により、消滅した債務の額の限度において、遺留分侵害額請求権によって負担する債務の消滅を請求することができます。(民法1047条第3項)
※受遺者、受贈者が、遺留分権利者が負うはずだった債務を消滅させたのだから、その分減額してと言える権利です。これも遺留分権利者に受遺者又は受贈者が減額又は消滅させてと意思表示しなければ効力は生じません。
4.遺留分侵害額請求権行使方法と消滅時効