3.偽造防止策として
いくらブロックチェーン技術を使っていても、作成の段階で成りすましていたらその信頼性が揺らいでしまいます。そこで、どうも偽造防止策として、「ネット上で顔撮影」+「電子署名」などで対応するみたいです。海外などでは、証人2名という事例もあるそうですので、今後の議論に注目ですね。
4.もう士業はいらないのか?
確かに、デジタル遺言制度で「形式的なチェック役」としての士業の価値はなくなってくると思います。AIがどんどん学習して、使えるものとなったとき一般的な形式のチェックはAIがやってくれると思います。しかし、その前段階での「想定している遺産の分け方で起こりうる法律的・税務的問題と対策、意思決定支援」なんかは、まだまだ各専門士業の活躍できる部分であると私は考えています。
スーツと同じで、既製品を買いたいと思うのか、オーダーメイドしたいと思うのかでその内容が異なってきますよね。
ご相談者の中には「ふつうはこのように分けた方が一般的だし、税務面で有利なのはわかっているのだが、どうしても〇〇に遺産の半分はあげたいんだ。」といったご要望に、様々な角度からゴールまでの意思決定をサポートする分野においては、まだまだ専門士業の活躍の場はあるのではと思います。
5.まとめ
今回のデジタル遺言制度の創設について、遺言のハードルが随分と下がってくると考えています。遺言を作成しておくことによるメリットは、とにかく大きいです。相続発生時の相続財産の帰属先が遺言により指定されていると、その内容により一応は決まります。その後に遺留分や相続分が少ないといった不満が出たとしても、一応は帰属先は決まることがメリットですよね。
遺言がないと、相続人全員で遺産分割協議で帰属先を決めるまで、法定相続分において共有といった、宙に浮いたような状態になってしまいます。協議が長引けば、その間に亡くなる人も出てくるかもしれません。そうした場合、さらに相続人の数が増えていくことになります。また、特別な感情を持つような相続人、例えば離婚した前妻の子供であったり、子供のいない夫婦の義両親との遺産分割協議だったり、なかなか話し合いが進まないようなケースや、実質応じていただけそうにないケースなども遺言書があれば、とりあえず財産の帰属先は決まるわけです。
今後も、デジタル遺言制度については、情報が出次第、ブログで取り扱っていきます。