4.相続債権者からの相続財産管理人の申し立てがある場合
亡くなった方に負債も多いが不動産などの財産も多い場合、相続債権者からの申し立てがあるかもしれません。しかし、今回のケースのように、亡くなった方の財産が自動車しかない場合などは、相続債権者からの申し立ては、あまり期待できないでしょう。
5.相続財産管理人の選任申立ての手間と費用
相続財産管理人に選任されるのは、「弁護士」「司法書士」といった専門家が就任することが多いです。一定期間、法定の手続きに沿って働いてもらう費用として、選任申立ての際には、裁判所に「予納金」を支払うことになります。その金額は、「数十万円から百万円以上」かかる場合もあります。これを相続人の方で負担するのは、少ししんどいですよね。ご相談される方にも、「借金が多いから相続放棄したのに、車の管理義務を逃れるために数十万円も支払うのはどうしたものか。」というご質問がありますが、法律上は「相続財産管理人の選任」は必要なのです。
6.相続財産管理人の選任をしなくてもいいケース
このケースについてご説明する前に、原則は「相続財産管理人の選任申立て」が原則であることと、実際にする場合には「自己責任」になりますのでご了承ください。
①車にローンがある場合でディーラーローンを組んでいるケース
ディーラーローンの場合、車検証を確認していただくとディーラー名義になっている場合があります。この場合には、所有者はあくまで「ディーラー」になりますので、ディーラーに車を引き取ってもらえばいいと思います。
➁車に金融機関のマイカーローンがある場合
この場合は、所有者は「亡くなった方」ですので「相続財産管理人の選任申立て」が必要になります。
③車にローンがなく、財産的価値がない場合
財産的価値がない車とは、査定額がゼロや、新車購入した場合でも5年以上経過した車は一般的に財産的価値がないと考えられます。(昨今の半導体不足で値段が上昇しているので査定をしてもらうことが大事)こういった車は財産価値がないので廃車等処分しても財産の処分にはならないという見解が有力です。ただし、有力であるので実際に認められるかどうかはわかりません。
注意点として、自動車税を滞納している場合では廃車処分ができないので、「相続人のポケットマネーから滞納している税金を支払う」ことが重要です。相続財産から出してしまうと相続財産の処分をしたとして単純承認したとみなされてしまうからです。
④車にローンがなく、財産的価値がある場合
当然、財産的価値があるので勝手に廃車等処分した場合、財産の処分に当たるので単純承認のリスクがあります。
保管しておくだけでコストがかかりますし、車の場合、放置していても財産的価値は下がりますので、「管理責任義務違反」になるかもしれません。また、売却換価して金銭として保管しておく方法もあります。この場合も、何社か査定をとり、「売却の必要性や売却価格の妥当性など資料を用意して債権者に説明できるようにしておくこと」が大事です。
7.最後に
予納金は必要ですが、単純承認とみなされるリスクを避けるためにも「相続財産管理人の選任」をした方がいいでしょう。