2.自筆証書遺言と公正証書遺言
①自筆証書遺言(しひつしょうしょゆいごん):
遺言者自身が手書きで書いた遺言書のことです。
遺言者が自らの意思を文書に記し、日付や署名を行います。
法的効力を持つためには、遺言者が死亡する前に遺言書に自筆で署名し、日付を入れる必要があります。
法律上の要件を満たすために、自筆で書かれ、遺言者の署名があることが重要です。また、内容が明確であることも求められます。
➁公正証書遺言(こうせいしょうしょゆいごん):
公証人が立会いし、遺言者の意思を確認した上で作成される遺言書のことです。
公証人は遺言者に対し、遺言書の内容や意味を確認し、遺言者の意思を理解したうえで遺言書を作成します。
遺言者は公証人の前で署名します。公証人も署名し、証人も立ち会います。
自筆証書遺言と比べて、法的な証拠力や信頼性が高いとされています。遺言書の内容や遺言者の意思が明確に公証されるためです。
要するに、自筆証書遺言は遺言者自身が書いたものであり、公正証書遺言は公証人が立会いし作成されたものです。どちらも法的な効力を持ちますが、相続人間で争いが生じた場合、公正証書遺言の方が通常、法的な証拠力が高いとされています。
3.遺言書がある場合とない場合の手続きの差
それでは、遺産が相続人に帰属するタイミングについてお話をいたします。
(1)遺言書がある場合
遺言者(亡くなった方)の遺志に従って、財産の帰属先が決定します。
(2)遺言書がない場合
相続人全員で遺産分割協議を行い、遺産分割協議書を取りまとめることで、相続財産の帰属先が決まります。つまり、遺産分割協議がまとまるまでは、法定相続分での状態になってしまうということです。その間に、相続人の中には法定相続分の持分を買い取り業者などに売却したりする方などが発生してしまいますと、遺産分割協議がうまくまとまらなくなってしまう可能性も出てきます。
遺産分割に関するトラブルは、遺言書がない場合、法律上の相続人の割合に従って分割されますが、これが家族や親族間での紛争を引き起こすことがあります。早めに遺言書を作成することで、財産の帰属先が宙に浮くことを未然に防ぐことができます。相続人間の争いについては、遺言書があってもなくても、起こるときは起こりますし、起こらないときは起こりません。家族間のコミュニケーションや、相続発生後の手続きの煩雑さなどから見ても、遺言書があるおかげで、ずいぶん軽く済んだケースを多く見てきました。ここで言えることは、相続関連の手続きで戸籍類など亡くなった方と相続人の関係を証明するための書類は圧縮され、遺言者と遺産を受け取る方の戸籍で関係性を証明すれば、手続きを始めることができる点です。なぜなら、遺産の帰属先は既に決まっているためです。
4.遺言書の未来
これまで紙でしか認められなかった遺言が、ついにパソコンやスマホからでも作成が可能になるというニュースがでましたね。(令和5年5月5日 日本経済新聞)