相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
第2回:実家の名義は“誰のまま”?相続登記をしていないリスクと年末チェック

年末に実家へ帰ると、普段は気づかない「名義の問題」が浮き上がることがあります。実家の登記名義が故人のまま放置されているケースは非常に多く、相続登記義務化が始まった今、放置すればリスクは年々増加します。本記事では、年末に必ず確認したい"名義の現状"と未登記による具体的な問題を司法書士の視点から解説します。
■ 目次
- 年末帰省は「名義問題」に気づく絶好のタイミング
- 相続登記をしていないと何が起きるのか
- 実家の名義が"昔のまま"になりやすい理由
- 年末に家族と確認したい名義のチェックポイント
- 未登記のまま放置した場合の法的リスク
- 相続登記義務化(3年ルール)の整理
- トラブル事例:名義放置で実家が動けなくなったケース
- まとめ — 名義の確認は「実家の未来を守る最低限の点検」
1.年末帰省は「名義問題」に気づく絶好のタイミング

「この家の名義って、いま誰になっているんだろう?」
実家に帰ったとき、ふと頭をよぎることはありませんか。
司法書士として日々相談を受けていると、
『名義が40年前のまま』
『祖父のまま誰も知らなかった』
といったケースは決して珍しくありません。
普段はスルーしがちな名義の問題も、年末に帰省すると、
- 書類整理をするタイミング
- 固定資産税通知が目に入る
- 家族が揃って話しやすい
といった理由で、名義問題が"明らかになる"きっかけが生まれます。
実は、年末は名義確認に最も適したタイミングなのです。
2.相続登記をしていないと何が起きるのか

2024年4月から、相続登記は義務化されました。
これにより、
相続を知った日から3年以内に登記をしなければならない
というルールが全国で適用されています。
相続登記未了のままで放置すると、次のような問題が発生します。
✔ 売却・賃貸ができない
名義が亡くなった人のままだと、契約書も決済も進みません。
✔ 兄弟に連絡を取らないと手続きできない
相続人が増えるほど、意思統一が難しくなります。
✔ 空き家の修繕・解体に補助金が使えないことも
自治体の制度は"現名義人"が申請者。未登記では申請不可のケースが多い。
✔ 放置すると「所有者不明土地」化してしまう
連絡の取れない相続人がいると、実家が"動かない資産"になります。
登記をしないことは、"問題の先送り"ではなく、
**「問題を積み増す行為」**と考えるべきです。
3.実家の名義が"昔のまま"になりやすい理由
なぜ実家の名義は放置されがちなのか。
理由は次の4つに集約されます。
① 名義を変えていないことに家族が気づいていない
「父が亡くなったけど、そのまま住んでいたから大丈夫だと思った」とよく聞きます。
② 手続きの優先順位が下がる
葬儀・生活の変化・仕事の忙しさ…気づいた時には数年経過。
③ 手続きが複雑だと思われている
専門家に相談すれば1〜2か月で完了するケースでも、"難しそう"というイメージで放置されがち。
④ 共有者が多い・連絡が取りにくい
「名義が祖父のまま」「相続人が全国に散らばっている」など典型例です。
名義放置は"怠慢"ではなく、"仕組みとしてそうなりやすい"と言えます。
4.年末に家族と確認したい名義のチェックポイント

実家の登記名義がどうなっているかは、年末に帰省した際に次の資料を見ると把握できます。
✔ 固定資産税納税通知書
- 名義が誰になっているか
・住所が昔のままか
→ これが最も手軽な名義確認方法です。
✔ 法務局の「登記事項証明書」
- 現名義人
・共有者の有無
・権利関係(抵当権など)
→ 法務局やオンラインで取得可能。司法書士に依頼すれば代行もできます。
✔ 名義人が亡くなっているかどうかの確認
意外と多いのが、
「名義が祖父のまま。祖父の亡くなった年すら不明」
というケース。
→ 年末に戸籍関係をまとめて整理する絶好の機会です。
✔ 家族の意向
- 誰が家を相続するのか
・誰が住む予定なのか
・売却や賃貸の意向はあるか
名義確認は"未来の話し合い"の出発点にもなります。
5.未登記のまま放置した場合の法的リスク

相続登記をしないと、後から次のようなトラブルが一気に噴出します。
● 相続人が増え、意思統一が不可能になる
相続人が10人、20人に増えるケースも珍しくありません。
● 遺産分割協議ができない
相続人の一人でも行方不明の場合、家庭裁判所の手続きが必要に。
● 売却ができない
名義が故人のままでは、不動産会社も取引に応じられません。
● 相続登記義務違反で過料
正当な理由なく3年以上放置すると、10万円以下の過料があり得ます。
● 所有者不明土地として扱われる
公共事業や地域の道路計画が止まるなど、第三者にも影響が出る可能性。
名義を放置するほど、問題は"指数関数的"に膨らむのが現実です。
6.相続登記義務化(3年ルール)の整理

【義務内容】
相続によって所有権を取得した場合、
相続を知った日から3年以内に相続登記をする義務があります。
【対象】
全国すべての不動産(宅地・家屋・農地・山林・空き地など)
【罰則】
正当な理由なく登記をしない場合、
10万円以下の過料の可能性があります。
【重要ポイント】
年末に「名義が誰なのか」を確かめておくことで、
**義務のスタートライン(3年間)**を正確に把握できます。
7.トラブル事例:名義放置で実家が動けなくなったケース

司法書士としてこれまで対応した相談から、典型的な事例を紹介します。
【事例1:父名義のまま20年放置 → 売却ができない】
- 実家は父名義
- 父が亡くなった後、母と兄弟が住み続けていた
- 売却しようとしたところ、相続人6名が署名を求められた
- うち1名の連絡が取れない
→ 結果:売却まで1年7か月。家庭裁判所の手続きが必要となり、高額な費用も発生。
【事例2:祖父名義 → 相続人17名】
- 名義が祖父(昭和40年代の登記)
- 相続人が全国に散らばる
- 誰も管理しておらず空き家化
- 固定資産税の通知すら宛先不明で返送
→ 結果:相続登記に1年以上。解体費用も200万円以上。
【事例3:名義不正確で補助金が使えない】
- 老朽化した実家を解体したい
- 市の補助金を利用しようとした
- ところが、名義が父(故人)のままで申請不可
→ 結果:補助金を逃し、全額自己負担に。
8.まとめ — 名義の確認は「実家の未来を守る最低限の点検」
実家の名義問題は、早い段階で確認すれば必ず負担は小さくできます。
年末は、家族が揃い、書類を見直し、冷静に話し合える貴重なチャンスです。
- 名義が誰になっているか
- 相続の有無
- 兄弟の意向
- 空き家化の危険性
この4つを確認しておくだけで、
「売りたい」「貸したい」「残したい」
いずれの判断が必要になっても、スムーズに動くことができます。
司法書士として、年末の今こそぜひ一度、実家の名義問題を点検していただきたいと強く感じています。

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