第2回:誰が引き取る? 誰も欲しくない遺産の行方

2025年12月16日

相続財産と聞くと「もらえるもの」と思いがちですが、近年は「誰も引き取りたくない不動産」が増えています。
実家、山林、畑──売れず、貸せず、管理も難しい。
相続人同士の話し合いがまとまらずに数年が経つケースも少なくありません。
本記事では、司法書士の立場から「負動産をめぐる遺産分割協議」の現実を解説します。

📖目次

  1. 「誰も欲しくない遺産」が増えている現実
  2. 遺産分割協議が進まない典型的なパターン
  3. 感情の対立と"押し付け合い"の構図
  4. 司法書士が見た「現実的な合意形成」のポイント
  5. 負動産の扱い方を決める3つの選択肢
  6. まとめ──"誰も損しない相続"を目指すには

1. 「誰も欲しくない遺産」が増えている現実

 かつては「親の家を継ぐのが当然」と考えられていました。
しかし、いまや都市部で暮らす子ども世代が実家を相続しても、
「遠すぎて管理できない」「利用する予定がない」と感じることがほとんどです。

 実際に、地方では「空き家・畑・山林」など、
相続しても経済的価値がほとんどない不動産が数多く存在します。
 それどころか、維持費や固定資産税、草刈りや修繕といった「負担」だけが残るケースが増えています。

このような"誰も欲しくない遺産"を前に、相続人たちが頭を抱える場面が実務でも増え続けています。

2. 遺産分割協議が進まない典型的なパターン

 負動産をめぐる遺産分割協議では、
「誰が引き取るか」が決まらず、協議が何年も進まないことがよくあります。

典型的なパターンを挙げると──

  • 「兄弟の誰も住む予定がない」
  • 「修繕費が高くて手を出せない」
  • 「売れない土地を引き取るのは損だ」
    といった理由から、誰も名義を引き受けたがらないのです。

 結果として、相続登記もされないまま放置され、名義が"亡くなった親"のままというケースが非常に多く見られます。
 この状態が長く続くと、次の世代では相続人が10人以上に増え、
合意形成がますます困難になります。

3. 感情の対立と"押し付け合い"の構図

 実務では、単なる経済的な問題だけでなく、
家族間の感情のもつれが負動産の協議をさらに複雑にします。

 たとえば──

  • 「長男だから責任を持てと言われたが、都会で生活していて無理」
  • 「親の介護をしてきたのは私だから、家はもういらない」
  • 「親の思い出の家を壊すなんて…」

 こうした感情的な意見が交錯し、「押し付け合い」「非難の応酬」に発展することも少なくありません。※ここまでくると、弁護士を代理人として立てて話をするか、遺産分割調停・審判まで行くケースが多くなります。

 司法書士として相談者の話を聞いていると、
話し合いの目的が"財産の整理"から"感情の整理"に変わっていく瞬間を聞いたことがあります。
負動産の処理は、単なる手続きではなく"心の調整"でもあるのです。

※争いが顕在化・表面化している案件は、司法書士では対応できませんので、弁護士にご相談ください。

4. 司法書士が見た「現実的な合意形成」のポイント

 負動産の分割協議をまとめるためには、
法律的な正しさよりも**「現実的に誰が管理できるか」**を優先して考える必要があります。

現場では次のような工夫が有効です:

  • 管理できる相続人に名義を集中させる(その代わり他の相続人に金銭補填)
  • 相続後すぐに売却・処分を前提とした合意書を作る
  • 相続放棄ではなく「遺産分割協議書で権利を整理」しておく

重要なのは、"引き受ける人"と"放棄する人"がそれぞれ納得できる形にすること。
不動産の名義が宙ぶらりんのままでは、管理責任や税負担が全員に残るという事実を理解してもらうことが第一歩です。

5. 負動産の扱い方を決める3つの選択肢

 実務的には、次の3つの方法で処理されるケースが多いです。

1️⃣ 相続人のうち誰かが引き取る
 → 管理・税負担を明確化。協議書に「他の相続人は将来関与しない」と明記。

2️⃣ 換価分割(売却して現金で分ける)
 → 売却益が出ない場合でも、固定資産税の負担からは解放される。

3️⃣ 相続放棄を検討する
 → ただし放棄には期限があり、家庭裁判所の手続きが必要。
  放棄後も管理責任が一部残ることがあるため、慎重な判断が必要。

どの方法を選ぶにしても、
「誰が管理し、誰が責任を持つのか」を明確にすることがトラブル回避の鍵となります。

6. まとめ──"誰も損しない相続"を目指すには

誰も欲しくない遺産をどう整理するか──
それは「家族関係をどう保つか」と同義でもあります。

実家や土地の行方を話し合うことは、
決して"財産争い"ではなく、"家族の将来を守るための話し合い"です。

早めに専門家を交えて、
・不動産の現状把握
・相続人全員の意向確認
・登記や管理の整理
を行うことで、次世代に「処分できない土地」を残さないようにできます。

次回は、こうした話し合いの末に「相続放棄」という選択を取るケースと、
その注意点について解説します。

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