第4回:動かない土地の末路──地方不動産市場のリアル

2025年12月18日

「相続した土地、売れば少しはお金になるだろう」──そう考えても、地方の不動産市場では思うように動かない現実があります。
買い手が見つからず、固定資産税だけがかかり続ける土地。
いま全国で増え続ける"動かない土地"の実情と、その裏にある市場の構造を、司法書士の視点で解説します。

目次

  1. 「土地は資産」という常識が崩れた時代
  2. 地方で土地が"売れない"本当の理由
  3. 固定資産税・管理責任──持ち続けるリスク
  4. 市場価格ゼロの土地がもたらす家族間トラブル
  5. 行政・専門家が注目する新しい動きと制度
  6. 動かない土地を「放置しない」ためにできること

1. 「土地は資産」という常識が崩れた時代

 かつては、「土地を持つ=資産を持つ」と言われた時代がありました。
 ところが、現在の地方ではその価値観が大きく変わりつつあります。

 人口減少、若年層の都市流出、そして農地や山林の需要減少──
これらの要因が重なり、地方では「売れない」「貸せない」「使えない」土地が増加。

 総務省の調査によれば、全国の空き地・空き家率は年々上昇しており、香川県でも特に郊外部では「持ち主不明土地」が深刻化しています。
 つまり、**"土地=資産"ではなく、"土地=負担"**という現実が、すでに静かに進行しているのです。

2. 地方で土地が"売れない"本当の理由

 地方不動産が動かない原因は、単に「買い手がいない」だけではありません。

  • アクセスの悪さ:最寄り駅やバス停まで距離がある
  • 需要の偏り:人口減少で宅地需要が限られる
  • 境界トラブルや登記未了:測量や名義変更の手間・費用が敬遠される
  • 建物の老朽化・残置物問題:解体・片付けに高額費用がかかる

 つまり、"売れない土地"には必ず理由があるのです。
司法書士の実務でも、相続人から「不動産業者に依頼したけれど反応がなかった」「広告を出しても問い合わせがゼロ」といった相談がよく寄せられます。

 不動産会社からの返答は概ね同じです。
「解体費や測量費を考えると、マイナスになりますね」と──。

現に、私が取り扱った不動産売買では、売主が持ち出しを支払うといった状態でした。

3. 固定資産税・管理責任──持ち続けるリスク

 売れないからといって放置すると、固定資産税は毎年発生し続けます。
 また、草木が伸びて通行人や隣地に迷惑をかけると、行政から指導・除去命令が届くこともあります。

 特に「老朽化建物を伴う土地」は、倒壊リスクや火災発生源として管理責任を問われる可能性があり、放置は危険です。

 さらに、2024年4月から始まった相続登記の義務化により、名義をそのままにしておくことは法的にもできなくなりました。
 放置=違反ではなくても、過料の対象となる可能性がある以上、動かない土地を「見て見ぬふり」はできません。

4. 市場価格ゼロの土地がもたらす家族間トラブル

 「相続人の誰も欲しがらない」土地ほど、話し合いが難航します。
 分割の際に「お兄さんが名義を持っておいて」「私は関係ないから」といった曖昧な合意で処理すると、名義だけが一人に集中し、負担もその人に集中する結果になります。

 また、将来的にその名義人が亡くなると、次の相続でさらに複雑化
"放置された土地"が世代を超えて受け継がれ、「誰も使わないのに相続人が増える」負の連鎖が起こるのです。

 このようなケースは、司法書士としての現場でも頻繁に見られます。
特に、地方の山林や農地では「誰も場所を知らない」「地図にもない」といった土地が実際に存在します。

5. 行政・専門家が注目する新しい動きと制度

 こうした問題を受け、国や自治体も動き始めています。

  • 相続土地国庫帰属制度(令和5年4月開始)
     → 一定の条件を満たせば、土地を国に引き渡すことが可能。
  • 空き家バンク・地域移住支援制度
     → 条件付きで譲渡・活用を支援。
  • 所有者不明土地法
     → 境界確定・管理代行を促進する法的枠組み。

 しかし、いずれも「申請条件が厳しい」「費用負担が残る」など、簡単に解決できるものではありません。
 重要なのは、「相続が発生してから」ではなく、「発生する前に」相談を始めることです。

6. 動かない土地を「放置しない」ためにできること

 現場の経験から言えば、次の3つが最も現実的な対処法です。

  1. 家族間での早期協議
     「誰が引き取るか」「将来どうするか」を相続前から話し合う。
  2. 専門家との連携
     司法書士・不動産業者・行政書士が連携すれば、選択肢が広がる。
  3. 登記と管理を整える
     名義をはっきりさせ、境界や現況を把握しておく。

"動かない土地"を「動かせる状態」に整えることが、最終的なコスト削減と家族トラブル防止につながります。

まとめ

「売れば金になる」時代は、すでに過去の話です。
土地を動かすには、登記・調査・維持費・市場性といった多角的な視点が必要です。
司法書士として強く言えるのは、「動かない土地ほど、早く動き出すべき」ということ。
その第一歩は、現状を知ることから始まります。

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