第5回:登記義務化で“負動産”はどう変わる? ─ 司法書士が提案する現実的な終い方

2025年12月19日

2024年4月から始まった「相続登記の義務化」。
これにより、"負動産"を放置することはもはや許されなくなりました。
しかし、「義務化=問題解決」ではありません。
登記をしても維持・管理できない土地が残る現実の中で、司法書士の立場から見た"現実的な終い方"を考えていきます。

📖目次

  1. 相続登記義務化で何が変わったのか
  2. 義務化で「困る人」が増えている現実
  3. 登記をしただけでは"負動産"は終わらない
  4. 「引き取り手がいない」土地への3つの選択肢
  5. 実務から見た"現実的な終い方"のステップ
  6. まとめ──「登記」はゴールではなくスタート

1. 相続登記義務化で何が変わったのか

 2024年4月1日から、相続登記の申請が義務化されました。
 これにより、相続人は「相続の開始(被相続人の死亡)を知った日から3年以内」に登記を行う必要があります。
 違反した場合は、**10万円以下の過料(罰金)**が科される可能性があります。

 この制度改正の背景には、全国で増え続ける「所有者不明土地」の存在があります。
 名義が亡くなった親のまま放置され、売ることも貸すこともできない──。
 こうした土地が全国で**九州全土を超える面積(約410万ヘクタール)**にも達しているといわれています。

 義務化は、この問題を少しでも減らすための第一歩です。
しかし実際の現場では、「登記できない」「したくても意味がない」という声も多く聞かれます。

2. 義務化で「困る人」が増えている現実

 司法書士として相談を受けて感じるのは、
 この義務化が**"手続きが進まない人"にこそ重くのしかかっている**という現実です。

 よくある相談例には次のようなものがあります。

  • 相続人が多く、話し合い(遺産分割協議)がまとまらない
  • 遠方に住んでいて、誰も現地を確認できない
  • 建物が老朽化しており、処分にも費用がかかる
  • 「相続したくない」と思っても、放棄の手続き期限が過ぎてしまった

 つまり、登記義務化は「動ける人」が動きやすくなる制度であり、
逆に「問題を抱えている人」にとってはより負担が増す制度でもあります。

3. 登記をしただけでは"負動産"は終わらない

 登記を済ませることは大切ですが、それだけで"負動産"の問題が解決するわけではありません。
 名義を移した後、その土地や建物を**「どう維持するか」「どう終うか」**が次の課題です。

 実際に、登記を終えた後に次のような声を聞きます。

「名義は自分になったけれど、管理の手間と税金が重い」
「登記しても誰も住まないので、結果的に固定資産税だけ払っている」

このように、登記後の管理・維持・処分の方がむしろ重要になっているのです。
司法書士としても「登記はゴールではなくスタート」とお伝えしています。

4. 「引き取り手がいない」土地への3つの選択肢

 それでは、誰も使わない"負動産"をどう整理すればよいのでしょうか。
現実的には、次の3つの方法が中心になります。

売却する(ただし市場性に注意)

需要がある地域では、早期売却が最も効率的な方法です。
ただし、老朽化した家や境界不明の土地は、解体や測量が必要となり費用負担が先行します。
まずは「査定前の整備」が大切です。

相続土地国庫帰属制度を利用する

令和5年4月にスタートした新制度。
一定の条件を満たせば、土地を国に引き渡すことが可能です。
ただし、

  • 建物がある場合は対象外
  • 境界・所有権が明確であること
  • 負担金(原則20万円)を支払うこと
    といった条件があるため、「万能な解決策」ではない点に注意が必要です。

家族内で"合意して引き取る"

遺産分割協議で、管理ができる相続人に権利を集中させる方法。
「固定資産税の負担分を現金で補う」など、柔軟な合意を行えば現実的に処理できます。
このケースでは、協議書作成と登記手続きがセットで必要になります。

5. 実務から見た"現実的な終い方"のステップ

 負動産を"うまく終う"ためのステップは、次の3段階です。

ステップ① 現況を「見える化」する

  • 登記簿謄本・固定資産評価証明書を取り寄せる
    ・土地の現況を写真で記録し、境界や状態を確認する

ステップ② 家族で「話す」

  • 誰が管理できるか
    ・今後、売却・寄附・帰属のどれを目指すか
    ・費用負担の分担をどうするか

ステップ③ 専門家に「相談する」

  • 登記・測量・処分を一連で整理
    ・国庫帰属制度や公的支援制度の対象か確認
    ・将来的な相続を見据えて「次に困らない形」に整える

 実際、こうした相談を早期に行った方ほど、費用も手間も少なく済んでいます。
「今はまだ大丈夫」と先送りすると、次の相続時に問題が倍増するのが負動産の怖いところです。

6. まとめ──「登記」はゴールではなくスタート

 登記義務化によって、すべての土地が"動き出す"わけではありません。
 しかし、放置はもう選択肢にならないという点で、この制度は大きな転換点です。

 司法書士としてお伝えしたいのは、
「登記」も「処分」も、"相続が発生する前から動く"ことが最大の防御策だということ。

 空き家・農地・山林──どんな不動産も、"誰がどう終うか"を今のうちに考えておくことが、
家族にとって最も優しい"終い方"です。

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