相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
親権・養育費・親子交流に関する民法改正(2024〜2026施行予定) ー 離婚後の「子どものためのルール」が大きく変わります ー

2024年に成立した「民法等の一部改正」によって、離婚後の親権・養育費・親子交流に関するルールが大きく変わります。今回の改正は、これまで"片方の親が親権をもつ"ことが原則だった日本の制度を見直し、より柔軟に、そして「子どもの最善の利益」を中心に考える仕組みへと転換するものです。
この記事では、司法書士として離婚・相続などの相談を数多く受けてきた立場から、一般の方にも分かりやすく改正内容を整理してお伝えします。
■ 目次
- 今回の民法改正はなぜ行われたのか
- 主な改正ポイント
2-1. 離婚後の「共同親権」の導入
2-2. 養育費のルール強化(法定養育費)
2-3. 親子交流(面会交流)の適正化
2-4. 財産分与・情報開示などの手続き強化 - 注意点(DV・虐待ケースへの対応)
- 施行時期と既に離婚している方への影響
- 今回の改正のポイント
- まとめ
■ 1. 今回の民法改正はなぜ行われたのか

今回の改正の中心となっている考え方は、
「離婚しても、親の責任は続く」
という原則です。
日本では長らく、離婚後はどちらか一方が親権者となる「単独親権」が原則でした。しかし、社会の変化や国際的な標準をふまえて、次のような課題が指摘されてきました。
- 離婚後、子どもと会えなくなる親が一定数いる
- 養育費の未払いが後を絶たない
- 親権を巡って争いが深刻化しやすい
- 子どもが両親とかかわる機会が十分確保されない場合がある
こうした背景から、今回は 「子どもの最善の利益」を一番に考える制度へ と、大きな見直しが行われました。
■ 2. 主な改正ポイント

◆ 2-1. 離婚後の「共同親権」が選べるように
これまで日本では、離婚後は必ず「どちらか一方の親」が親権者でした。
今回の改正により、
✔ 離婚後の
- 共同親権
- 単独親権
のいずれかを選べるようになります。
【共同親権が選べる場合】
- 夫婦が話し合いで合意できたとき
- 合意できないときは家庭裁判所が判断
【単独親権となる場合】
- DV・虐待のリスクがある
- 協力関係が難しく子どもの利益を害する場合
- 裁判所が単独親権が妥当と判断したとき
つまり、
共同親権が万能になったわけではなく、「子どものために協力できるか」が重要
という仕組みに変わります。
◆ 2-2. 養育費のルール強化(法定養育費の導入)
養育費の未払いは日本でも深刻な問題です。今回の改正では、
✔ 養育費の合意がない場合でも
一定の基準額(法定養育費)を請求できる制度
が導入されます。
金額は政令で定められる予定です。
さらに、
✔ 養育費の取り立て(強制執行)が簡素化
- 一度の申立てで複数手続を同時に進められる
- 相手方の収入情報について裁判所が開示を命じられる
など、実効性が高まりました。
◆ 2-3. 親子交流(面会交流)の適正化
離れて暮らす親と子どもの関わり(親子交流)についても、次のような整備が行われます。
- 交流の合意内容をより明確に記載
- 子どもの安全確保を前提に、裁判所が内容を決める際の基準を強化
- 子どもの意見を丁寧に反映する仕組み
単に「会える・会えない」の二択ではなく、
子どもが安心して会えるかどうかを重視した制度 になります。
◆ 2-4. 財産分与・情報開示などの手続き強化
今回の改正では、養子縁組・財産分与といった周辺部分も整理され、
- 財産分与の算定・手続きの明確化
- 相手の所得や資産の情報開示の強化
など、より実効的な制度となりました。
■ 3. 注意点(DV・虐待ケースへの特別配慮)

共同親権が選べるようになったことで懸念されるのが、DVや虐待があるケースです。
改正法では、
- DV・虐待がある場合は共同親権を認めない
- 裁判所が事実関係を丁寧に審査する
と明記されています。
この点は、子どもの安全を守るための重要な歯止めです。
■ 4. 施行時期と既に離婚している方への影響
改正法の施行は
▶ 2026年5月までの政令で定める日(原則:公布から2年以内)
となっています。
なお、
✔ すでに「単独親権」で離婚している方
→ 自動的に共同親権に変わることはありません。
共同親権を希望する場合は、改正後に 家庭裁判所へ親権者変更の申立て をする必要があります。
■ 5.今回の改正のポイント
司法書士として感じる今回の改正の核心は、
親権ではなく「子の利益」を軸に制度が再構築されたこと
です。
- 親の権利争いではなく「子どものために何が最善か」
- 養育費や交流の実効性が高められた
- 共同親権の導入で選択肢が広がった
特に養育費の履行確保や、情報開示制度の強化は、現場で長年課題とされてきた点であり、今回の改正で大きく前進したと言えます。
■ 6. まとめ
民法改正は、離婚や子どもの養育に関わる方にとって非常に重要な内容です。
しかし、
- 自分の場合は共同親権と単独親権のどちらがいいのか
- 養育費はいくらになるのか
- 親子交流をどのように取り決めるべきか
など、個別事情によって最適な答えは変わります。
実際の効力を求められるからは、弁護士に相談することをお勧めします。

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