「やばい。何かとてつもないものに巻き込まれている。」ような感じがして、恐怖がピークに達しました。大声を上げながら、必死で舗装道路まで構わず走りました。
どのくらい走ったのはわかりませんが、ごろげ落ちるように舗装道路に出ました。
「助かった。」と思い、歩いて民家を目指しました。
4.「グレーのスーツを着たおじさん」の正体
そんな体験をした後、結局、その会社も辞めることになり、寮も引き払い高松市内で住むようになりました。その後、結婚をし、とあるコミュニティーの会合で出会ったMさんという方と仲良くなりました。
そして、今から7年程前の会合で、なぜかMさんにこの話をしました。そして話の途中で山道で遭った「グレーのスーツを着たおじさん」の話をしようとすると、Mさんが急に「灰色のスーツのおじさんだろ」と言ったので面喰いました。なぜわかるんだと思い、聞いてみると、実はMさんもこの「グレーのスーツを着たおじさん」に出会ったことがあるそうです。Mさんは「私が小学生の高学年の時に、あの獣道を展望台に向かって、父親と友人と3人絵で登っていた時に出会ったんだよ。山のハイキングの途中だから挨拶したのに黙って通り過ぎたから覚えているんだ。すれ違う時、その灰色のスーツのおじさんは子供を後ろに引き連れていたんだよ。変だなと思って後ろを振り返るともういなかったんだよ。」と言いました。Mさんは50代後半、小学生の高学年のころと言えばその時から45年ほど前ということになります。今からで言うと50年以上前の出来事になります。私の体験は今から18年ほど前。つまり、時空を超えて現れている存在ということになります。
5.「立場が違うよ橋本君」
Mさんの話に夢中になり、いろいろと聞いていました。そして、「同じ体験をした人がいたんだね。」と話をすると、Mさんが「いいや、立場が違うよ橋本君。」といいました。はじめは何のことかわからずきょとんとしていると、「橋本君、わたしはあの獣道を登っている時に「グレーのスーツを着たおじさん」とすれ違ったんだよ。その時に子供が後ろにいたことを話をしたよね。」とMさんが言いました。私は「そうだね。」というとMさんはすかさず、「橋本君は「グレーのスーツを着たおじさん」の後ろを歩いていた子供の立場で、私の体験した立場が違うよ。」といわれて、改めてぞっとしました。私は、何とか助かりましたが、Mさんが見た子供はどうなったのでしょうか。(終わり)