相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
(論点)人生100年時代における認知症対策:事前準備の重要性と具体的対策

現代社会では、医療の発展や生活水準の向上により、人生100年時代が現実のものとなりつつあります。長寿は喜ばしいものですが、年齢を重ねるにつれて発生するリスクにも目を向ける必要があります。その中でも特に注目されるのが認知症です。認知症は、判断能力が低下し、財産管理や意思決定が困難になる病気であり、家族にとっても多大な負担となります。そこで、認知症に備えるための対策が必要です。本記事では、認知症発症前にできる具体的な対策を中心に解説し、安心して長寿を迎えるための準備方法を考察します。
目次
- 任意後見制度の活用
- 成年後見制度の利用
- 財産管理の信託契約
- 遺言書の作成
- 終活としての準備
1. 任意後見制度の活用

認知症対策として最初に挙げられるのが、任意後見制度です。この制度は、まだ判断能力が健全なうちに、自らの意志で後見人を選任し、将来判断能力が低下した際に、財産管理や生活面での支援をお願いする仕組みです。契約の際に信頼できる人を後見人として指名し、家庭裁判所が監督することで、任意後見契約が正式に発効します。判断能力が低下した時点で契約が発効するため、後見人が本人の利益を最優先に考え、管理することが保障されます。
特に認知症のように判断能力が徐々に低下する病気の場合、任意後見契約を事前に結んでおくことで、財産や生活の管理を自分の意志に基づいた形で行えるというメリットがあります。これにより、本人が意図していない状況を回避し、安心して将来を迎えることが可能となります。
2. 成年後見制度の利用

任意後見制度が活用されないまま、認知症などで判断能力が失われた場合、成年後見制度が用いられることがあります。この制度では、家庭裁判所が後見人を選任し、本人に代わって財産管理や日常生活の支援を行います。法定後見制度は、家庭裁判所の厳格な監督下で後見人の行動が管理されるため、不正行為を防ぐための仕組みが整っています。
ただし、成年後見制度では本人の意志に基づく選任が難しく、裁判所の判断で後見人が選ばれるため、事前に信頼できる人物に任せることができる任意後見制度と比較すると、本人の意志が反映されにくい側面があります。そのため、判断能力が完全に失われる前に、家族や専門家と相談しながら後見制度の利用を検討することが重要です。
3. 財産管理の信託契約
財産の管理に不安がある場合、信託契約を活用することも有効な認知症対策です。信託契約とは、財産を信頼できる人物や専門家に委託し、管理・運用をお願いする制度です。たとえば、家族信託と呼ばれる形態では、財産を信頼する家族に託すことで、認知症による判断能力の低下後でも財産の適切な管理が行われます。
家族信託は、認知症が進行しても財産が適切に守られるため、本人にとっても家族にとっても安心感をもたらす制度です。また、遺産分割に関するトラブルを未然に防ぐ効果もあります。信託契約を活用することで、認知症リスクに備える財産管理の仕組みを整えることが可能です。
4. 遺言書の作成

認知症の発症に備えて、遺言書の作成も重要な対策のひとつです。遺言書は、財産分与や相続に関する本人の意思を明確に表す法的文書であり、これを事前に作成しておくことで、認知症により判断能力を失った場合でも、遺産分割に関するトラブルを避けることができます。
特に、遺言書がない場合、相続人同士での争いが発生する可能性が高まり、家族間の不和につながるリスクがあります。認知症が進行してしまうと、遺言書の作成は法律的に無効となるため、判断能力が健全なうちに準備することが重要です。これにより、自分の意思がしっかりと反映された相続が実現できます。
5. 終活としての準備
終活という言葉が一般的に広まる中、認知症対策も終活の一環として取り組むことが推奨されています。エンディングノートの作成や、葬儀の準備、そして財産分割に関する計画などを事前に行うことで、自分の意志がしっかりと反映される老後を迎えることができます。
認知症が進行すると、自分の意志を伝えることが難しくなるため、エンディングノートに自身の希望や要望を記載しておくことが非常に有効です。また、財産に関する情報や重要書類を整理しておくことで、家族に負担をかけずに済みます。終活を通じて、自分の意思を尊重しつつ、認知症対策を行うことができるのです。
まとめ
認知症対策は、単なる医療面の準備だけでなく、財産管理や法的手続き、そして家族への影響も考慮した包括的な計画が求められます。任意後見制度や信託契約、遺言書作成など、さまざまな法的手段を活用し、自分や家族が安心して老後を過ごせるような体制を整えておくことが、人生100年時代を迎えるための大切な準備となります。

最新のブログ記事
ここまでの記事で、
「認知症になると家が凍結される」
「空き家と義務化がその家を爆弾に変える」
という現実をお伝えしてきました。
では、どうすれば防げるのか。
結論は明確で、認知症になる前に、不動産の出口を"法律で"作るしかありません。
そのための三大手段が、遺言・任意後見・家族信託です。
ただし、この3つは万能ではなく、不動産の種類によって使い分けなければ逆に失敗します。
「親が施設に入ったから、実家はとりあえず空き家のまま」
この判断が、将来の相続を取り返しのつかない地獄に変えているケースが後を絶ちません。
なぜなら、空き家 → 認知症 → 売れない → 登記できないという流れが一度始まると、家は"資産"ではなく負債化するからです。
結論から言えば、空き家になる前にしか不動産は救えません。
相続登記が義務化されたことで、「相続しないまま放置していた家」は、もはやグレーではなく法律違反になり得る時代に入りました。
しかし現場では、親が認知症で"登記したくてもできない"家が急増しています。
結論から言えば、認知症 × 義務化 × 不動産が重なると、家は「資産」から**"法的爆弾"**に変わります。
この記事では、その仕組みと回避策を司法書士の視点で解説します。

