私は、こういった相談会だけでなく、普段の業務でも個人情報を取り扱っていますので、カバンの中に書類を入れた状態になった場合、基本どこにもよらず事務所に戻り、手続き途中の書類を顧客ごとにまとめたファイルに、引き取った状態で入れます。また、防犯カメラも設置していますので、事務所内外の様子は音声付データとして記録されています。今まで紛失したことはありませんが、何かあった場合でもトレースできやすいようにしています。仮にどうしても、その途中で、別件が入っている場合、かばんは肌身離さず持ち歩くようにしています。
今回の経緯を見ていますと、「相談会翌日の11日に生駒市内の喫茶店で集計作業をし、その後、飲食をして帰宅。14日に、集計作業の続きをしようとしたところ、予約票がないことに気が付いた」とあり、10日の相談会から14日まで個人情報を持ち歩いています。やはりこの点が、問題であると言わざるを得ません。10日の後すぐに、事務所に持ち帰って、作業するまで一時保管すべきだったと思います。
3.個人情報保護法
私が、システムの職員として地元金融機関に中途採用で入った少し後に、個人情報保護法が施行されました。金融機関内では、それぞれの部署から担当責任者を定め、施行日に合わせて、内規の整備、システムの構築をしていきました。当時、ピリピリしていたことを今でも覚えています。何せ私も担当者になっていましたから。(2003年5月頃)
その時の個人情報保護法しか知らずに、今から7年程前に、司法書士試験を目指す前に受けた行政書士試験で、また、個人情報保護法を見ることになりましたが、当初のもの比較して、洗練されていることに驚きました。
個人情報保護法でいうところの「個人情報」は、「生存する個人に関する情報で、氏名、生年月日、住所、顔写真などにより特定の個人を識別できる情報」と定義されています。また、「他の情報と容易に照合することができ、それにより特定の個人を識別することができることとなるもの」も含まれます。
さらに、取り扱いに注意を要する「要配慮個人情報」というものがります。「人種、信条、社会的身分、病歴、犯罪の経歴、犯罪により被害を被った事実のほか、身体障害・知的障害・精神障害などの障害があること、医師等により行われた健康診断その他の検査の結果、保健指導、診療・調剤情報、本人を被疑者又は被告人として逮捕等の刑事事件に関する手続が行われたこと、非行・保護処分等の少年の保護事件に関する手続が行われたことの記述などが含まれる個人情報」のことを言い、取得には、事前に本人の同意を要するとされています。
金融機関関係については、「機微(センシティブ)情報」というものも定義されており、「本人の信条や社会的身分、病歴など、漏洩した場合に犯罪に悪用される、もしくは重大な不利益を本人に及ぼす可能性のある情報のこと」とされています。
まさに、相続の相談事項などについては、私は「センシティブ情報」に該当すると考えています。ですので、相談は、原則、ご自宅か事務所で行うようにしています。近所の喫茶店などでは、まずいですよね。そのような場所では、相談内容を話をしたり書類を整理したりする場所ではないと考えます。
4.まとめ
「大阪司法書士会は今後、相談会当日に運営責任者から相談票を回収するなどして再発防止に努めるとしています。」とあります。
個々の司法書士の意識が上がらなければ、なかなかむつかしいと思います。そもそも、「司法書士法 第二十四条 司法書士又は司法書士であつた者は、正当な事由がある場合でなければ、業務上取り扱つた事件について知ることのできた秘密を他に漏らしてはならない。」とあります。故意に漏らすのは論外として、このように意図せず漏れてしまった場合にも神経を使わなければなりません。運用方法を今一度見直す必要があるのかなと考えてしまいます。