相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
(論点)相続の生前対策として、生前贈与について考える

相続の生前対策として、以下のような贈与制度を活用することが効果的です。これらの制度は、相続発生前に財産を有効に活用し、相続税の負担を軽減するための手段として広く利用されています。以下、各項目ごとに詳しく解説します。
目次
1. 相続時精算課税制度
2. 夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除
3. 教育資金の一括贈与
4. 住宅取得等資金の贈与
5. 結婚・子育て資金の一括贈与
6. 特定障碍者に対する贈与税
まとめ
1. 相続時精算課税制度

相続時精算課税制度は、60歳以上の親や祖父母から20歳以上の子や孫に対して、財産を生前贈与する際に利用できる制度です。この制度では、贈与時には2500万円まで非課税で財産を移転でき、超過部分については一律20%の贈与税がかかります。ただし、相続時にはこの制度を利用して贈与した財産が相続財産に加算され、相続税の計算に反映されるため、最終的な税負担が確定します。
この制度のメリットは、贈与を通じて早めに財産を移転できることにあります。また、大きな贈与を非課税で行えるため、将来的な相続税の負担を軽減する効果が期待されます。ただし、相続税の計算において、贈与財産が再度加算される点には注意が必要です。令和6年1月1日から、年間贈与の110万円控除が追加されています。
※相続時精算課税を登録すると途中でやめることはできなくなります。専門家と相談の上、利用の有無を検討してください。
2. 夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除
「夫婦間の居住用不動産の贈与による配偶者控除」は、婚姻期間が20年以上の夫婦間で利用できる制度です。この制度を活用することで、居住用不動産またはその購入資金について、最大2000万円までの贈与が非課税となります。この控除は、一生に一度しか利用できませんが、夫婦間で居住用の財産を早めに贈与できるため、相続時の財産総額を減少させることができます。
この制度のメリットは、相続時に課税される財産を生前に減らせる点にあります。特に高額な不動産が夫婦の財産の一部である場合、将来の相続税対策として有効です。ただし、この制度を利用する際には、贈与後もその不動産に居住し続ける必要があるため、贈与後の生活設計を考慮することが重要です。
3. 教育資金の一括贈与

「教育資金の一括贈与」は、30歳未満の子や孫に対して教育資金を一括で贈与する際に、非課税枠を設ける制度です。贈与額が1500万円までであれば非課税で贈与でき、贈与された資金は教育にかかる費用(授業料や教材費、留学費用など)に使用されます。この制度を利用することで、相続発生前に教育資金を効率的に移転し、相続財産を減らすことができます。
この制度のメリットは、教育費という将来の支出を前もって賄える点にあります。また、贈与者の財産を相続時に減少させることで、相続税の軽減にもつながります。ただし、教育資金として適切に利用されなかった場合には、贈与税が課せられる可能性があるため、資金の使途に注意が必要です。
4. 住宅取得等資金の贈与
住宅取得等資金の贈与は、子や孫が自宅を購入する際に、その購入資金を贈与する場合に適用される非課税制度です。贈与税の非課税枠は、贈与の対象となる住宅の種類や省エネ性能などに応じて異なりますが、最大で1000万円までが非課税となります。
この制度を活用することで、若い世代に対して住まいを確保する支援を行いながら、相続財産を減らすことができます。また、住宅購入のタイミングに合わせた贈与が可能であり、早めに相続対策を行うことができます。ただし、この制度も一度しか利用できないため、贈与のタイミングや金額について慎重に検討する必要があります。
5. 結婚・子育て資金の一括贈与

結婚・子育て資金の一括贈与は、子や孫が50歳未満の場合に、結婚や子育てに必要な資金を一括で贈与する際に利用できる制度です。最大で1000万円までが非課税で贈与でき、この資金は結婚式の費用や妊娠・出産費用、子育て費用などに充てることが可能です。
この制度のメリットは、相続財産を減らしつつ、家族の生活を支援できる点にあります。また、子や孫が結婚や子育てのための資金を必要とするタイミングで贈与が可能なため、贈与者と受贈者双方にとって利便性の高い制度です。ただし、利用した資金が結婚・子育て以外の目的に使われた場合には贈与税が課せられるため、注意が必要です。
6. 特定障碍者に対する贈与税
特定障碍者に対する贈与税の特例は、特定の障碍者(重度の障碍を持つ者)に対して信託や贈与を行う際に、贈与税が軽減される制度です。具体的には、障碍者の生活や医療費を賄うための信託を設定する場合、その信託財産のうち6000万円までが非課税となります。この制度を利用することで、障碍者の生活を安定させるための資金を確保しつつ、贈与税の負担を軽減できます。
この制度のメリットは、障碍者の生活を財政的に支えることができる点にあります。また、贈与税が非課税となることで、贈与者も財産を相続前に効率的に移転でき、相続時の負担を軽減することができます。
まとめ
相続の生前対策として、これらの贈与制度を活用することは非常に有効です。各制度は、相続時の財産を減少させることで相続税の負担を軽減し、相続手続きの円滑化にもつながります。贈与を通じて早めに財産を移転することが、家族全体の経済的な安定にも寄与します。しかし、各制度には利用条件や一度しか適用できない制限があるため、慎重に検討した上で活用することが重要です。
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