第3回:それでも放棄できない? 相続放棄と負動産の誤解
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遺産分割協議は、相続人間で相続財産をどのように分割するかを合意する重要な手続きです。しかし、合意後に様々な理由からその協議を解除する必要が生じる場合もあります。遺産分割協議の解除は、法律上の効力が生じた後であっても可能な場合がありますが、その条件や影響については慎重に検討する必要があります。本記事では、遺産分割協議の解除に関する基本的な知識と手続きについて解説し、実際に協議を解除する際に留意すべきポイントを探ります。
目次
1. 遺産分割協議とは

遺産分割協議とは、相続人全員が集まり、相続財産の分割方法について合意する手続きです。遺言がない場合や遺言に記載されていない財産については、この協議を通じて分割方法を決定します。協議が成立すると、その内容を「遺産分割協議書」という書面にまとめ、相続人全員が署名押印を行うことで正式な法的効力が発生します。
2. 遺産分割協議の法的効力
遺産分割協議が成立し、協議書に相続人全員が署名押印すると、その内容に基づいて財産の分配が行われます。法的には、この協議が一度成立すると、相続人間で新たに協議を行うことは原則として許されません。しかし、協議の際に重要な情報が欠けていたり、錯誤や詐欺によって合意が成立した場合には、法的効力を無効または解除することができる可能性があります。

3. 遺産分割協議の解除とは
遺産分割協議の解除とは、成立した協議を相続人間で取り消すまたは無効にする手続きのことを指します。通常、解除は相続人全員の合意があれば可能ですが、合意に至らない場合や解除が一方的に主張される場合には、法的な争いになることがあります。また、解除後は遺産分割協議を再度やり直す必要があるため、その影響は大きく、慎重な対応が求められます。
4. 遺産分割協議の解除が可能なケース
遺産分割協議を解除できるケースには、以下のような状況があります。
5. 遺産分割協議を解除する手続き
遺産分割協議の解除は、原則として相続人全員の合意が必要です。合意が得られた場合、再度協議を行い、新しい遺産分割協議書を作成します。また、協議の解除を求める際には、裁判所に申し立てを行うことも可能です。特に、錯誤や詐欺が疑われる場合には、裁判所に対して協議の無効や取り消しを求めることが一般的です。
6. 遺産分割協議解除の影響
遺産分割協議が解除されると、財産の分配が白紙に戻ります。そのため、すでに財産が分配されている場合には、相続人間で返還手続きが必要となる場合があります。また、税務面でも影響が生じる可能性があり、相続税の再申告や追加納税が必要となることもあります。したがって、協議を解除する際には、法的および税務的な影響を十分に考慮し、専門家のアドバイスを受けることが重要です。

7. 遺産分割協議解除に関する注意点
遺産分割協議の解除は、相続人間での合意が基本であるため、相続人間の信頼関係を大きく損なう可能性があります。特に、錯誤や詐欺が絡む場合には、法的な紛争に発展することも少なくありません。また、解除が認められない場合もあるため、解除を考える際には事前に法律の専門家に相談し、慎重に手続きを進めることが大切です。
結論
遺産分割協議の解除は、相続手続きにおいて非常に重要な判断となります。協議が一度成立した後に解除するには、相続人全員の合意や法的な根拠が必要です。また、解除後の手続きや税務面での対応も慎重に行う必要があります。相続に関するトラブルを避けるためには、事前の準備と適切な専門家のアドバイスが欠かせません。

「使わない土地はいらない」「古い家を相続したくない」──そう思っても、単純に"放棄"すれば済むとは限りません。実は相続放棄には"期限と手順"があり、うっかり放置してしまうと、結果的に"負動産の所有者"になってしまうことも。今回は、相続放棄の誤解と正しい対応方法を司法書士が解説します。
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