増え続ける「相続人不存在」ケースとは?背景と現状を司法書士が解説

2025年11月10日

近年、「相続人がいない」ために遺産が国庫に帰属するケースが急増しています。背景には少子高齢化や未婚化など社会構造の変化があります。本記事では、相続人不存在とは何か、どのように財産が扱われるのか、そして現状の問題点について司法書士がわかりやすく解説します。

目次

  1. 相続人不存在とは何か?
  2. 相続人不存在が判明した場合の財産の流れ
  3. 相続財産管理人の役割とは
  4. 国庫帰属に至るまでの仕組み
  5. 相続人不存在が増えている社会的背景
  6. 現状がもたらす課題とリスク
  7. まとめ:相続人不存在を防ぐためにできること

1. 相続人不存在とは何か?

 相続人不存在とは、被相続人(亡くなった方)に法定相続人が存在しない、または相続人が全員相続を放棄したために、相続を受ける人がいない状態を指します。
 通常、相続は民法で定められた「法定相続人」に承継されます。例えば、配偶者、子ども、直系尊属(父母など)、兄弟姉妹がその順番に該当します。しかし、子どもがいない、親もすでに亡くなっている、兄弟姉妹もいない、というケースは決して珍しくありません。

 さらに、法定相続人が存在しても「借金が多いため相続放棄する」という事情もあり、その結果、相続人不存在が生じることがあります。

2. 相続人不存在が判明した場合の財産の流れ

 相続人不存在が判明すると、まずは家庭裁判所に「相続財産管理人」の選任を申し立てます。管理人は、残された財産を適切に管理・清算する役割を担います。
財産管理人が行う業務は以下の通りです。

  • 財産の調査・管理(不動産の維持管理、預貯金の把握など)
  • 債権者や受遺者への弁済
  • 特別縁故者への財産分与の手続き

これらを経ても財産が残る場合、最終的に国庫に帰属することになります。

3. 相続財産管理人の役割とは

 相続財産管理人は、相続人不存在の場合に必ず登場する重要な存在です。
 例えば、不動産を放置すれば荒廃して近隣住民に迷惑をかける可能性があります。また、預貯金や株式なども管理しなければ、利害関係人の権利が侵害されかねません。

 そのため、相続財産管理人は家庭裁判所の監督のもとで、公告や債権者への弁済を進めます。公告期間を経ても相続人が現れなかった場合、次のステップに移行します。

4. 国庫帰属に至るまでの仕組み

相続人不存在の手続きは、次のステップで進みます。

  1. 相続財産管理人の選任
  2. 債権者や受遺者への弁済
  3. 特別縁故者(被相続人の世話をしていた人など)への財産分与
  4. それでも残った財産が国庫へ帰属

 つまり、国庫帰属は「最後の受け皿」です。すぐに国庫へ移るのではなく、一定の手続を踏んでからの帰属となります。

5. 相続人不存在が増えている社会的背景

 ここ数年、相続人不存在は急増しています。その理由は主に次の3点です。

  1. 少子高齢化
     子どもを持たない世帯の増加、高齢者の単身世帯の増加により、相続人がいないケースが増加しています。
  2. 未婚化の進展
     生涯未婚率が上昇し、配偶者や子どもを持たないまま亡くなる人が増えている点も大きな要因です。
  3. 地域社会のつながりの希薄化
     かつては親族や地域で自然と支え合いが行われていましたが、現代では近隣や親族との関わりが薄れ、相続手続きが放置されやすくなっています。

 実際、法務省や裁判所の統計によると、相続人不存在による国庫帰属財産の総額は年間1,000億円を超える水準で推移しており、「社会問題」ともいえる状況です。

6. 現状がもたらす課題とリスク

 相続人不存在は単に「財産が国に渡る」だけの問題ではありません。いくつかの社会的リスクをもたらします。

  • 空き家・放置不動産の増加
     相続人がいない不動産は管理がされず、老朽化や不法投棄の温床となる可能性があります。
  • 手続きの長期化
     相続財産管理人の手続きは公告・弁済・分与を経るため、数年単位で時間がかかることもあります。
  • 地域社会への影響
     農地や山林が放置され、地域の環境や安全に悪影響を及ぼすケースも増えています。

 このように、相続人不存在は個人の財産の問題を超えて、社会全体に波及する課題となっているのです。

7. まとめ:相続人不存在を防ぐためにできること

 相続人不存在を完全に防ぐことは難しいですが、事前に備えることでリスクを減らすことは可能です。
 例えば、遺言書を作成することで、自分の財産の行き先を明確にしておくことができます。あるいは、遺贈寄付という形で社会に役立てることもできます。

 「相続人がいないから自分には関係ない」と思われがちですが、実際には相続放棄や親族関係の希薄化など、誰にでも関わる可能性のある問題です。早めの準備が、トラブル回避につながります。

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