似て非なるものであることがわかると思います。
3.東京地裁令和3年8月17日判決の事例
死因贈与契約でも遺贈と同様に個別の銀行預金を譲ることは可能です。銀行預金を譲渡する場合には死因贈与が契約として有効かどうか以外に、払い戻しが問題なくできるのかどうかという点も問題となります。仮に、この贈与が相続人ではない第三者だった場合、相続人との関係も、金融機関としては考慮しなければならないからです。
東京地裁令和3年8月17日判決の事例では、財産を受けた側から金融機関に払い戻しを要求したところ、金融機関側が「相続人全員の同意書」を求めたことから端を発しています。
金融機関の預金には、譲渡制限特約は必ず盛り込まれています。(譲渡制限特約がなければ、自分の預金口座を第三者に事由に譲渡できることになり、特殊詐欺の振込先の預金に使われてしまうため)。そして、仮に受贈者がその特約は知らないと言っても、重過失になり認められません。
法律上、死因贈与契約には遺贈にかかわる法律の規定が準用されると規定されています。遺贈については譲渡禁止の対象となる債権譲渡というものには当たらないとされています。
一方で、遺贈は遺言で遺言者が単独で行うものであるのに対し、死因贈与は契約で譲る方と譲り受ける方の合意によって権利を移すものです。遺贈と同等に考えるとなると禁止の対象にならない、つまり払い戻しは可能となります。他方、契約での移転なのだから禁止の対象となると考えれば、払い戻しはできないことになります。判決では、契約である以上は禁止の対象になると判断しています。
4.まとめ
事例は地裁の判決なので何とも言えない部分はありますが、金融機関側が二重払いリスク回避や「譲渡制限特約」を主張して、相続人全員の同意書が必要となりました。東京地裁では金融機関側の主張が認められています。
今回の死因贈与契約による預金の払い戻しに関して、遺言のように執行者を選任しても、預金に関しては、譲渡禁止特約の対象になる点には注意が必要です。
そもそも、遺言で遺贈を行えば、遺言執行者を遺言書で指定又は家裁に選任を申立して就任した場合、遺言執行者は「相続人全員に遺言の内容を通知」しなければなりません。死因贈与には、このような規定がありませんので、一見、相続人に知らせずに預金の払い戻しができるように見えますが、預金の譲渡制限特約により、契約書だけでは預金の払い戻しはできないということになりますね。