【一般社団法人の設立完全ガイド】非営利だけど営利活動OK?その仕組みと手続きとは

2025年06月05日

一般社団法人の設立は、非営利法人として社会貢献活動や専門家団体の運営、業界組織の立ち上げなどを行いたい方にとって、有力な選択肢です。株式会社のような出資者がいなくても法人格を持てる点や、比較的簡易な設立手続きが魅力です。

しかし一方で、「非営利ってことは利益を出してはいけないの?」「営利活動は一切できないの?」といった誤解も多く見られます。この記事では、一般社団法人の設立方法とともに、その実態――つまり非営利法人でありながら営利活動が可能な仕組みについて、分かりやすく解説します。

目次

  1. 一般社団法人とは?
  2. 「非営利」の正しい意味とは
  3. 一般社団法人で営利活動はできるのか?
  4. 一般社団法人の設立条件と流れ
  5. 登記に必要な書類一覧
  6. 設立後に必要な手続き
  7. 一般社団法人の活用例とメリット
  8. まとめ

1. 一般社団法人とは?

 一般社団法人とは、人の集まり(社団)に法人格を与える非営利法人です。株式会社のような出資者は存在せず、「社員」と呼ばれる構成員2名以上で設立します。活動内容に制限はなく、公共的な団体から民間ビジネスに近い事業まで、幅広い運営が可能です。

2. 「非営利」の正しい意味とは

 「非営利」と聞くと、営利目的の活動が一切禁止されていると誤解されがちですが、正確には次の通りです。

  • 利益を出してはいけない → 誤り
  • 利益を構成員に分配してはいけない → 正しい

 つまり、利益の追求はOKですが、その利益を社員や理事に分け与えることができないという意味です。この点が、株式会社などの営利法人との大きな違いです。

3. 一般社団法人で営利活動はできるのか?

 結論:営利活動は可能です。

 一般社団法人は以下のような活動を行い、収益を得ることができます:

  • 講演会やセミナーの開催と参加費徴収
  • 物販やサービス提供
  • 広告収入やコンサルティング事業
  • 会費・寄付金の受け入れ
  • 補助金・助成金の受給

 ただし、これらで得た利益は、法人の運営費や次年度の活動資金に充てる必要があります。社員や理事への分配はできませんが、理事には適正な報酬を設定することができます。

4. 一般社団法人の設立条件と流れ

設立の主な条件:

  • 社員が2名以上(設立時)
  • 定款の作成と公証人による認証
  • 登記の実施

設立の流れ:

  1. 定款の作成
     目的、名称、主たる事務所、社員、事業年度、機関設計などを記載
  2. 定款の認証(公証役場)
     株式会社同様、公証人による認証が必要。電子定款なら印紙代は不要。
  3. 設立時社員総会の開催
     理事・監事の選任、定款内容の確認などを行います。
  4. 設立時理事による業務執行
     代表理事の決定、法人印の作成など。
  5. 登記申請(法務局)
     本店所在地の法務局で設立登記を行います。

5. 登記に必要な書類一覧

  • 定款(認証済)
  • 設立時社員の決定書または議事録
  • 理事・監事の就任承諾書
  • 印鑑届出書
  • 登記申請書
  • 登録免許税(6万円)を納付
  • 代表理事の印鑑証明書

6. 設立後に必要な手続き

  • 税務署への法人設立届出書の提出
  • 都道府県・市町村への届出(事業税など)
  • 法人銀行口座の開設
  • 必要に応じて社会保険・労働保険の手続き

7. 一般社団法人の活用例とメリット

活用例:

  • 専門家団体(士業、技術職など)
  • 地域活性化の任意団体の法人化
  • イベントやカルチャースクールの運営母体
  • 中間持株会社(ホールディングス)の形式

メリット:

  • 出資が不要で設立可能
  • 非営利だが柔軟な事業展開ができる
  • 社会性や公益性を評価されやすく、助成金などに強い
  • 理事会や社員総会など、組織設計に自由度がある

8. まとめ

 一般社団法人は、「非営利法人」でありながらも「営利活動」が可能というユニークな立ち位置の法人格です。利益は構成員に分配できませんが、しっかりと収益をあげて法人としての活動を広げることは十分にできます。

 設立手続きも株式会社と比べて比較的簡易で、目的が明確な団体にとっては、非常に使い勝手の良い法人形態です。非営利性を保ちつつ、ビジネス的なアプローチで事業展開を考えている方には、ぜひ選択肢の一つとしておすすめします。

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