【医療法人設立】医療法人の設立を検討している医師・歯科医師の方へ~設立要件・手続き・メリットと注意点を徹底解説~

2025年05月23日

開業医として一定の実績を積んできた方が次に検討すべきステップとして「医療法人化」があります。個人事業のまま診療を続けていては節税や事業承継の面で限界があります。特に昨今では、医療法人の設立を通じて、経営の安定化・資産形成・次世代への承継対策を行う開業医が増えています。

本記事では、「医療法人の設立」に関心のある医師・歯科医師の方に向けて、設立の流れ・要件・メリット・注意点などを分かりやすく解説します。

これから法人化を検討する方はもちろん、「今が法人化のタイミングか?」とお悩みの方もぜひご一読ください。

目次

  1. 医療法人とは何か?
  2. 医療法人設立のメリット
  3. 設立のための要件
  4. 医療法人設立の流れとスケジュール
  5. 医療法人化の注意点
  6. まとめ

1. 医療法人とは何か?

 医療法人とは、診療所や病院を運営する医師等が法人格を取得し、非営利の形態で医療サービスを提供する組織です。医療法に基づき設立され、株式会社などの営利法人とは異なり、利益の分配が原則として認められていません。

 主な医療法人の形態は以下の通りです:

  • 社団医療法人(社員が3人以上必要)
  • 財団医療法人(設立数が少なく、特殊なケース)

 現在設立されている医療法人の大多数が社団医療法人です。

2. 医療法人設立のメリット

 医療法人を設立することには、以下のような大きな利点があります。

節税効果が期待できる

 医療法人では所得が法人税の対象となるため、所得税率よりも低い税率で収められるケースが多く、役員報酬や退職金を経費計上することも可能です。

事業承継がしやすくなる

 個人経営では、医師の死亡や引退により診療所の運営が停止する可能性がありますが、法人にすることで継続的な医療提供が可能になります。後継者へスムーズな事業承継が可能です。

社会的信用の向上

 医療法人は公的な認可法人であることから、金融機関や取引先との関係において信頼性が高まり、融資や契約上のメリットを享受できます。

3. 医療法人設立のための要件

 設立にあたっては、以下の要件を満たす必要があります。

人的要件

  • 社団医療法人では社員が3名以上必要。
  • 理事3名以上、監事1名以上を選任。
  • 理事長は原則医師または歯科医師。
  • 監事は理事との兼任不可、かつ欠格事由のない者。

施設と資産の要件

  • 診療所を開設していること(または設立後速やかに開設する計画があること)。
  • 所在地の都道府県が定める一定の財産を保有していること。

その他の条件

  • 法人名称の適切性(既存法人との重複・誇大表現の禁止)。
  • 組織運営に関する定款の整備。

4. 医療法人設立の流れとスケジュール

 医療法人の設立は年に1~2回、都道府県が設ける設立認可申請のスケジュールに従って進めます。一般的な流れは以下の通りです。

  1. 事前相談(都道府県の医務課など)
  2. 定款・必要書類の準備
  3. 設立社員総会の開催
  4. 都道府県知事へ認可申請
  5. 医療審議会による審査
  6. 設立認可の取得
  7. 法務局への設立登記
  8. 診療所の再開設届(保健所)と保険医療機関指定の手続き

 申請から認可、登記、再開業までに要する期間は約6ヶ月程度とされています。スケジュールに余裕を持った計画が必要です。

5. 医療法人化の注意点

 法人化にはメリットが多い一方で、以下のような注意点もあります。

設立・運営コストがかかる

 定款作成、登記、行政への届出、会計処理など、手続きや維持費が個人開業に比べて複雑・高額になります。専門家の支援がほぼ必須です。

資金調達の自由度が下がる

 株式会社のように株式発行ができず、出資金も制限されるため、自由な資金調達は難しいです。

利益配分が制限される

 非営利法人であるため、出資者に利益を分配することは原則禁止されています。

6. まとめ

 医療法人の設立は、節税・承継・社会的信用など多くのメリットをもたらしますが、手続きや運営には高度な専門知識が必要です。設立タイミングを見極め、都道府県のスケジュールに合わせて準備することが求められます。

 設立の検討段階から、税理士や司法書士、行政書士といった専門家に相談することで、リスクを抑えながらスムーズに法人化を進めることができます。

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