【第2回】相続発生後に“見えないデジタル遺産”を調査する方法7選 ~ネット銀行、仮想通貨、サブスク…「手がかりゼロ」でも諦めない~

2025年10月28日

相続が発生した後、相続人が直面するのが「財産の全体像が把握できない」という問題です。特に近年では、ネット銀行や仮想通貨、オンライン証券、各種サブスクリプションなど、通帳や書類が一切ない**デジタル遺産(デジタル資産)**の存在が、相続手続きを困難にしています。

では、故人が遺したネット完結型のサービスや資産の存在を、どのように調査・把握すれば良いのでしょうか? 本記事では、相続発生後にデジタル遺産を調べるための現実的な手段を7つ紹介し、相続人として取るべき行動を具体的に解説します。

目次

  1. 遺品(スマホ・PC)をまず確保
  2. メール・アプリ履歴の確認
  3. クレジットカード利用明細から手がかりを探す
  4. 通知メールやクラウドの検索
  5. 家族へのヒアリング
  6. 信用情報の開示請求
  7. プロによるデジタル調査支援の活用
  8. まとめ:情報は"点"から"線"へつなぐ

1. 遺品(スマホ・PC)をまず確保

 最も重要なのは、故人のスマートフォンやパソコンをできる限り早く確保することです。ネット銀行や証券会社、暗号資産などの資産は、ログイン情報が残されたデバイスにしかヒントがないことが多いため、初期段階で他の親族に処分されたり、ロック解除できずに諦めてしまうと、調査が著しく困難になります。

※注意:デバイスのロック解除については、相続人としての正当な理由があれば、メーカーへの申請や、裁判所を通じた手続きが可能なケースもあります。

2. メール・アプリ履歴の確認

 スマホやパソコンの中にあるメールアカウント(Gmail、Yahoo!メールなど)を開き、「〇〇銀行」「楽天証券」などのキーワードで検索すると、利用履歴が出てくる可能性があります。

 また、スマホ内のアプリ一覧を確認すると、

  • ネットバンク(例:楽天銀行アプリ)
  • 決済アプリ(例:PayPay、LINE Pay)
  • サブスク管理アプリ
    などがインストールされていれば、利用していた可能性が高まります。

3. クレジットカード利用明細から手がかりを探す

 相続人であれば、クレジットカード会社に対して故人の利用明細を請求することができます。

 明細書を精査することで、

  • サブスク(月額引き落とし)
  • ネット銀行へのチャージ
  • 暗号資産の購入履歴
    などが見つかる場合があります。

 また、「Apple.com」「Google」「Amazon」「Coincheck」などの名称が明細にある場合、関連するアカウントの存在を疑ってみる必要があります。

4. 通知メールやクラウドの検索

 スマホやPCでログイン済のGoogleアカウントやApple IDがあれば、

  • Gmail、iCloudメールの内容
  • GoogleドライブやDropboxのファイル一覧
  • Appleの「サブスクリプション」設定画面

 などから、契約中のサービスや保有資産の情報を探ることができます。

 特にDropboxやGoogle Driveには、契約書やログイン情報を保管している方も多く、財産の手がかりとなる情報が眠っている可能性があります。

5. 家族へのヒアリング

 近年は「子どもにネット資産の話をしていない」「パスワード管理アプリを使っていたが、その存在すら家族が知らない」などのケースが増えています。

  • 故人と頻繁に連絡を取っていた家族や知人に、
     「何かネットサービスの話をしていたか?」
     「スマホの使い方で何か特徴があったか?」
    をヒアリングすることは、予想外のヒントになることがあります。

 また、郵送物がないとはいえ、年に一度だけ届く「株主総会の通知」「税金関係の書類」などが手がかりになることも。

6. 信用情報の開示請求

 相続人は、**信用情報機関に対して「故人の信用情報の開示請求」**を行うことができます。これにより、

  • 保有していたカードローンやクレジットカードの情報
  • 引き落とし先の銀行名

 などが分かる場合があり、そこから間接的に他の口座や資産へたどり着く手がかりになります。

【主な信用情報機関】

  • CIC(https://www.cic.co.jp/)
  • JICC(https://www.jicc.co.jp/)

7. プロによるデジタル調査支援の活用

 どうしても情報が見つからない場合は、デジタル遺品調査を専門とする業者や、相続に詳しい司法書士・弁護士に相談するという手段もあります。

 中には「スマホのデータ解析サービス」や「パスワード解析サポート」を提供する専門企業もあります。
※ただし、法的な許可・相続人としての立場が明確であることが前提です。

 また、司法書士や弁護士は、法的手続きを通じて銀行や証券会社への照会を行えるため、「どこに問い合わせていいか分からない」状態でも調査が可能になります。

8. まとめ:情報は"点"から"線"へつなぐ

 デジタル遺産の調査は、従来の通帳や証券のように一目で分かるものではなく、「点在する小さな手がかり」を拾い上げ、それを**"線"としてつなぐ推理的な作業**です。

  • スマホやパソコン
  • メール履歴やクラウド
  • クレカ明細や信用情報

 これらの情報を組み合わせていくことで、見落とされがちな財産にたどり着くことができます。

 次回(第3回)は、「事前にやっておけばよかった」後悔を防ぐための生前対策について取り上げます。相続人に迷惑をかけないため、今からできる準備の実践的なヒントをお届けします。

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