【第2回】権利証をなくしていたらどうする? 事前通知制度と印鑑証明書の実務

2026年04月14日

抵当権抹消登記のご依頼を受けて、金融機関から届いた書類を確認していると、時々こんなことがあります。

「登記識別情報が見当たりません」
「権利証を紛失してしまったようです」

住宅ローンの設定から20年、30年と経っていることも多く、
その間に書類を紛失してしまうことは珍しくありません。

では、権利証がない場合、抵当権抹消登記はできないのでしょうか。
結論から言えば、制度上は可能です。

ただし、その場合には
**「事前通知制度」**という特別な手続きを利用することになります。

今回は、この事前通知制度の仕組みと、
実務上重要になる印鑑証明書や会社法人等番号の扱いについて解説します。

目次

  1. 登記識別情報(権利証)の役割
  2. 権利証を紛失していた場合の対応
  3. 事前通知制度とは何か
  4. 印鑑証明書が必要になる理由
  5. 法人の場合は会社法人等番号で代替できる
  6. 実務でよくある勘違い

1.登記識別情報(権利証)の役割

抵当権抹消登記の基本書類の一つに、

登記識別情報(または登記済証=いわゆる権利証)

があります。

これは、抵当権を設定した際に
抵当権者である金融機関に発行されたものです。

この書類は、

「確かにこの金融機関が抵当権者である」

ということを証明するための重要な情報です。

そのため、通常の抵当権抹消登記では、
この登記識別情報を添付して申請を行います。

2.権利証を紛失していた場合の対応

しかし、現実の実務では、

  • 金融機関側で書類を紛失している
  • 合併や組織変更の過程で所在が不明
  • 古い書類で保管場所が分からない

といった事情で、
登記識別情報が見つからないこともあります。

この場合、

「もう抹消登記はできないのでは?」

と心配されることもありますが、
制度上は別の方法が用意されています。

それが、事前通知制度です。

3.事前通知制度とは何か

事前通知制度とは、

登記識別情報の代わりに、
法務局が本人確認を行う制度です。

流れは次のとおりです。

① 抵当権抹消登記を申請する
② 法務局から登記義務者(金融機関)へ封書が届く
③ 金融機関がその書類に実印を押印して返送
④ 法務局が印影を照合
⑤ 問題なければ登記が完了

つまり、

「本当に金融機関が抹消に同意しているのか」

を、法務局が直接確認する仕組みです。

この手続きを経ることで、
登記識別情報がなくても登記が可能になります。

4.印鑑証明書が必要になる理由

ここで重要になるのが、
金融機関の印鑑証明書です。

※法務局で金融機関が取得することになりますが、通常はないと思います。

事前通知では、

  • 金融機関が返送した書類に押された実印

  • 登録されている印影

を照合する必要があります。

その照合資料として、
印鑑証明書が必要になるわけです。

通常の抵当権抹消登記では
印鑑証明書は不要ですが、

事前通知を利用する場合に限って必要になる

という点は、実務上の重要ポイントです。

5.法人の場合は会社法人等番号で代替できる

金融機関は法人ですので、
印鑑証明書の代わりに次の方法が利用できます。

会社法人等番号の提供

この番号を申請書に記載すれば、

  • 法務局が商業登記を確認し
  • 登録されている印影と照合

することが可能になります。

その結果、

印鑑証明書の実際の添付は省略可能となります。

ただし、ここで一つ重要な実務上の注意点があります。

それは、

添付書類欄には「印鑑証明書」と記載が必要

という点です。

実際には会社法人等番号で確認を行う場合でも、
申請書上は「印鑑証明書」を添付書類として明記しなければなりません。

この点を知らずに申請すると、
補正になる可能性があります。

6.実務でよくある勘違い

この事前通知制度に関して、
現場でよくある勘違いがあります。

それは、

「印鑑証明書は常に必要」

という思い込みです。

しかし実際には、

  • 通常の抹消登記
     → 印鑑証明書は不要
  • 事前通知を利用する場合のみ
     → 印鑑証明書が必要

という整理になります。

また、

  • 印鑑証明書の代わりに会社法人等番号が使える
  • それでも添付書類欄には記載が必要

という点も、実務特有の細かな注意点です。

こうした部分を一つ一つ確認しながら進めることが、
抵当権抹消登記の現場では欠かせません。


次回予告

第3回では、

「銀行名が違う!」
商号変更や合併がある場合の変更証明書

について、実務で頻繁に起こる金融機関の変遷と、
その対処方法を解説します。

最新のブログ記事

Share
<