【第3回】協力を拒む相続人がいるとき、どうする?〜感情的対立とその解決方法〜

2025年10月14日

相続手続きでは、法定相続人全員による合意が必要です。ところが、血縁関係であっても、過去の確執や複雑な家庭環境から、「話し合いに応じない」「印鑑を押さない」相続人がいるケースは少なくありません。
とりわけ、前妻との間の子どもや、特定の相続人との関係が悪化していた兄弟姉妹が相続人となっている場合、感情的対立が協議を頓挫させる原因になります。
本記事では、感情的な理由で相続に協力しない相続人への対応方法と、手続きを前に進めるための具体的な解決手段を解説します。また、こうした状況を回避するための遺言書の活用方法もご紹介します。

【目次】

  1. 協力を拒む相続人とは?
  2. 感情的対立が相続を止めてしまう理由
  3. 実際によくある対立パターン
  4. 話し合いが決裂した場合の選択肢
  5. 遺産分割調停とは何か
  6. 感情的な対立を回避するためにできること
  7. 「遺言書」でトラブルは最小限に
  8. 【無料相談受付中】相続の悩みを一緒に整理しませんか

1. 協力を拒む相続人とは?

 相続人のなかには、話し合いの場に出席しない、あるいは一方的に反対するなど、協議に応じない人物が含まれることがあります。その理由は「損をしたくない」「他の相続人を嫌っている」など様々ですが、一人でも協議に加わらない相続人がいれば、遺産分割は成立しません

2. 感情的対立が相続を止めてしまう理由

 民法では、相続人全員が合意しない限り、遺産分割協議は成立しないとされています。したがって、法律的な正当性よりも、感情的な理由で協力を拒む人が1人でもいれば、手続きが止まってしまうのです。

 例えば、ある兄弟が「自分は親から冷遇されていた」と感じていた場合、その不満をぶつける形で、協議を妨害することがあります。
法的には不当であっても、「印鑑を押さない」というだけで全体を止められてしまうのが、相続の現実です。

3. 実際によくある対立パターン

  • 前妻との子どもと現配偶者の子どもが対立
  • 長男と二男で、親の面倒をどちらが見ていたかでもめる
  • 介護に関与しなかった相続人に対する不満
  • 被相続人が特定の人に財産を偏らせた場合の不公平感
  • 兄弟姉妹間の過去のトラブルや疎遠状態

これらの背景には、「納得できない」「認めたくない」という心理的要因が強く働いています。

4. 話し合いが決裂した場合の選択肢

 協議が成立しない場合、家庭裁判所に「遺産分割調停」を申し立てることになります。調停は裁判ではなく、裁判官と調停委員を交えて中立の立場で話し合いを進める手続きです。

 当事者同士では話がこじれても、第三者の介入によって冷静に協議が進むことが多く、解決の糸口になることがあります。
 ただし、解決まで数ヶ月〜1年以上かかることもあり、調停が不調に終わった場合には「審判」へと進みます。

5. 遺産分割調停とは何か

 遺産分割調停は、家庭裁判所に申し立てて開始します。調停委員(法律と民間感覚の両方を備えた中立の立場の専門家)を通じて、当事者同士が直接顔を合わせずに話し合えるようにする制度です。

 感情的に対立している相手と直接話す必要がないため、当事者の心理的負担を軽減しながら、現実的な妥協点を模索することが可能です。

6. 感情的な対立を回避するためにできること

  • 早期の専門家相談(司法書士・弁護士など)
  • 相続人全員に公平な情報提供を行う
  • 財産の分け方に合理的な理由をつける(例えば「自宅は長男が住んでいたため相続させる」など)
  • 一部の相続人に対しては、代償金(代わりのお金)を用意する

 また、被相続人が生前から「誰に何をどう分けるか」を相続人に対して丁寧に説明しておくことで、死後の誤解や疑念を和らげる効果もあります。

7. 「遺言書」でトラブルは最小限に

 やはり最大のトラブル防止策は、遺言書の作成です。特に「この子とは疎遠になっている」「遺産の大半を事業承継に使いたい」などの明確な意向がある場合は、それを明記しておくことが重要です。

 公正証書遺言であれば、家庭裁判所の検認も不要で、確実に実行できます。
 「相続争いの火種」を生前に消しておくことこそが、残された家族への思いやりです。

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