そんな中でこの方が相続対策として選択したのが「貸金庫」でした。果たして貸金庫は相続対策になるのでしょうか。重要なものを保管しておく場所として貸金庫の選択はありだと思いますが、相続対策として貸金庫はどうなんでしょうか。仮に自宅に保管していたとしても、それは相続財産であり、銀行の貸金庫に保管されていたものも相続財産です。違いはと言われると、長男が父親と同居していて父親から預かっていた証書や国債証券なんかはすでに手元にありますが、貸金庫だと相続発生後は相続人全員の同意がある場合か、遺産分割協議でどなたかに貸金庫内の財産を承継する遺産分割協議書を提出し貸金庫内の財産の帰属先がはっきりしないと、絶対に金融機関は貸金庫を開けてくれません。預貯金や有価証券なんかもそうなのですが、相続発生後のその財産の承継先がはっきりしないのに払い出しや返却をした場合、後にトラブルになる可能性があるからです。
また、貸金庫は地下や銀行窓口とは別フロアに設置されている場合が多いです。金融機関に連絡をして貸金庫の予約をし、車いすの父親を自分の車に乗せて当日出向いたら、2階まで負ぶってきてくださいと言われたと言っていましたが、事前に、父親が車いすである旨も伝えておかなければならなかったと思います。なぜなら、事前にそのような状態であることを金融機関が把握していたのであれば、車いすでも対応できる別の支店を紹介してもらえたかもしれません。
3.相続財産の調査
相続財産の調査は、金融機関から保険会社、不動産と様々です。それぞれどのように調べていくのかを確認していきましょう。
①銀行口座
父親の預金通帳やキャッシュカード類、また定期的に届く銀行からの郵便物等で取引銀行を特定し、調査の依頼をまずはしてください。そうすると、取引のある支店の情報がわかると思います。「相続預貯金等の残高証明書」を発行してくれると思います。これは、口座そのものを解約や名義を書き換えるわけではないので当該預貯金の帰属先がまだ決まっていない状態でも取得可能です。ただし申請時は、相続人の実印・印鑑証明書のほか、被相続人との間柄がわかる戸籍謄本等の書類が必要で、1通あたり500円~1,000円程度の手数料もかかります。
この証明書内には、当該銀行からの融資の情報も入っていますので、この情報を基に遺産分割協議をするのが一般的です。証券会社も同様です。
実際に名義変更や解約の手続きをする場合は、それぞれの金融機関によって、提出する書類や申請先などが異なりますので、具体的に財産の帰属先が決まってから各金融機関に問い合わせてください。
また、専門家に頼んだ場合、遺産承継業務として費用は掛かりますが、一連の手続きをサポートしてくれます。これも費用が掛かりますので、残高を確認の上検討するのが一般的です。
➁保険会社