相続登記義務化により、「正当な理由」なく相続登記を怠った場合の法律上の罰則は、「最大10万円以下の過料」です。しかし、相続登記をしないことによるデメリットは、過料以外にもあります。
①処分できない
処分するためには、当該不動産の名義人を明示する必要があります。最終的に売却することになっても、亡くなった方相手に売買契約はできません。権利関係が明確にできない状態で、処分することはできないということです。そのためにはどうしても、相続登記をして、現存する名義人に変更しておかなければなりません。
➁権利関係が複雑になる
戦後民法は、遺言書がない場合、相続人全員に相続の権利があるとしています。ですので、数代にわたり相続登記を放置していた場合、権利関係が複雑になり、相続人の調査だけで、相当な費用が発生してしまいます。また、名義人となる方に名義変更を行うには、相続人全員と遺産分割協議をする必要があります。仮に、法定相続人全員の持分ごとの相続登記をしたとしても、処分する場合には、その全員と相手方で手続きをすることになります。いずれにしても、相続人全員を特定する必要があります。
③共同相続人の中にお金に困っている方がいた場合
先ほども話をしましたが、遺産分割協議で特定の相続人に名義を変更するそ族登記と、法定相続人の持ち分に応じた相続登記、どちらもすることもできます。しかし、㋐借金に窮している相続人の債権者が「代位による登記」にて、法定相続登記を行い、その持分に抵当権を設定したり、㋑当該相続人が不動産の持分を持分買い取り業者に売却してしまうこともあり得ます。
もし、㋑が発生した場合、他の相続人にできる相続分の取戻権があります。
「(相続分の取戻権)
民法 第九百五条 共同相続人の一人が遺産の分割前にその相続分を第三者に譲り渡したときは、他の共同相続人は、その価額及び費用を償還して、その相続分を譲り受けることができる。
2 前項の権利は、一箇月以内に行使しなければならない。」
とあり、1ケ月を過ぎますと、権利行使できなくなってしまいます。その後、共有持分を得た業者は、「共有物分割請求」をしてくる可能性があります。
共有持分の買取価格は、仮に3000万円の3分の1の持分を売却しても、1000万円にはなりません。相当低い価格になってしまいます。業者は、共有物分割請求をすることで、1000万円を回収しようとするでしょう。そうやって、業者が儲けているわけです。