今回の相続登記義務化における法律の改正では、相続登記義務化に対する罰則は、10万円以下の過料となっています。
「なんだ、10万円払えばいいんじゃないの。」と思われるかもしれませんが、そういうわけにはいきません。
また、「相続人申告制度」という制度があり、こちらをすることで過料を免れることはできますが、「相続登記をしないこと」の問題点は、過料だけではありません。
3.相続登記の問題は義務化の過料だけじゃない
相続登記をしないということは、当該不動産の名義人が亡くなった方のまま放置されるということを意味します。放置している間に相続が数次的に発生した場合、現行の民法では、相続人と数次相続が発生した方たちの相続人も権利関係者となります。東京近郊の空き家の相続関係者が100人にも上るという記事を見かけたことがあります。この100人の権利者間で、法定相続分で相続登記を行うか、遺産分割協議をして相続人の一人に不動産を帰属させて、相続登記はできません。
それでは、相続登記をしないとどうなるのかと言いますと、その朽ち果てた建物を処分できません。共有の問題で、処分行為をする場合には、共有者全員の同意を要するからです。
これらのことが面倒だからと言って、放置していた場合、さらに深刻な問題が発生いたします。それが「所有者責任」です。不動産に限らず、ものを所有するということは、その管理責任は所有者にあります。しかも「無過失責任(過失があろうとなかろうと責任を負うことになる)」です。不動産を相続登記せずに放置した場合、老朽化や管理不全のために放置された状態であったために、第三者が不利益を被った場合、と書くと難しくなりますので、例えば、管理ができていなかった家の外壁が崩れて、誰かが死傷した場合、その責任を所有者が負うということです。名義人が既に死亡していた場合も、その相続人が責任を負うことになります。相続というのは、亡くなったからの権利義務をすべて引き継ぐからです。
こういった問題が常に付きまとう状況となりますので、やはり相続登記は早めに行い、使わない不動産は、早期の処分を行うことをお勧めいたします。