この制度は、相続人のうち一人が相続人申告登記をした場合であっても、その効果は他の相続人にまで及びません。よって、一人ずつ申し出をする必要があります。相続人のうちの一人が相続人申告登記をすれば、他の相続人についても、あわせて「申出がされたものとみなすべきでは」、と議論はされたようですが、詳細な戸籍謄本等の提出は求めず、申し出をした人の氏名、住所等を付記するにとどめる簡単な制度にするという制度趣旨から、個人単位での申出が必要になりました。ただし、他の相続人から委任を受け、代理人として代表者1名が全ての相続人全員分の申し出を行うことは可能です。この申し出につきましては、法務局に収める申請費用はかかりません。
この申出により、相続を原因とする所有権移転登記を申請する義務を履行したものと見なされます。しかし、この状態のままでは、当該不動産を売買で処分することはできませんので、注意が必要です。最終的には、遺産分割協議を経て、当該不動産の所有者を確定させて後に相続登記をすることが必要になってきます。
5.まとめ
最近の法律相談で相続登記義務化についてのご質問が増加してきておりますので、今回、過去の記事からの抜粋で「過料の回避方法」にスポットを当てて解説いたしました。
相続登記義務化の罰則である過料を免れる方法として、
①相続発生後、3年以内に相続登記を実施する
➁相続人申告登記を実施する
がありますが、①の遺産分割をしない法定相続分での登記は共有関係となるためお勧めできません。➁の相続人申告登記も相続登記義務化は免れますが、この後売買する場合には相続登記が必要となります。
司法書士が、相続登記を受任して調査すると、複数世代にわたって相続登記をしていない建物のケースが10件に3件ほどありました。未登記の建物は、役所に届出をすればいいのですが、そもそも建物を新築する場合には、1か月以内に表題登記をしなければならないと規定されているため、厳密にいえば違法状態だといえます。表題登記のみの建物も散見されるのですが、相続人の調査が膨大になり、そのままになっているケースもありました。
今後、おそらくこのような建物も対象になってくる可能性があるかもしれませんね。
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