2.相続財産の金銭債権とは
例えば、被相続人が相続人以外の第三者にお金を貸していた場合などが当たります。
また、これ以外にも共同相続人全員の合意により遺産を構成する特定の不動産を第三者に売却した場合、その代金債権は各相続人のその持分に応じて帰属することになります。(最判昭52.9.19)よって、この時の代金債権は各相続人が遺産分割することなく、債務者(買主)に請求できるということになります。
3.相続財産の収益不動産物件の賃料について考える
とある遺産の収益物件を借りている第三者Aがいて、賃料を毎月被相続人(亡くなった方)に支払っていたとします。相続が発生した後、相続人XとYが遺産分割協議をした結果、Xがこの収益物件を取得することになり、その賃料債権も取得することとなりました。
この時、相続開始から遺産分割までの間の賃料債権は誰のもの?となります。遺産分割協議が整えば、相続開始時に遡って効力を発生するので、その時の賃料債権も遺産分割後の賃料債権もXのものと考えることはできます。
しかし、この点についての判例があります。
「相続開始から遺産分割までの間に共同相続に係る不動産から生ずる賃料債権は、各共同相続人がその相続分に応じて分割単独債権として確定的に取得し、この賃料債権の帰属は、後にされた遺産分割の影響を受けない。(最判平17.9.8)」
つまり、相続から遺産分割までの間の賃料債権は、相続分に応じて確定的に取得されることになります。
4.まとめ
このように、相続財産とひとくくりにしても、その財産内容により、取り扱いが異なる場合が存在します。生活の状況等から、どうしても早急に財産の処分をしたいケースも出てくるかもしれませんが、結果、処分した財産が遺産分割対象の財産であり、その後の遺産分割協議でもめる原因になる可能性もあります。相続人間の連絡をしっかり取って、専門家の意見も参考にしながら、進めるようにしてください。上記のように、不動産売却後の金銭債権については、「共同相続人全員の合意により」なされたことが必要です。勝手に処分すると、相続放棄ができなくなったり、処分した遺産を取り戻すため、他の相続人に多大な迷惑をかけることになりかねません。
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