第1回:実家が「空き家化」していないか?年末帰省で必ず見るべきチェックポイント

2025年12月23日

年末は、実家の「今」を確認できる貴重なタイミングです。親が元気に暮らしていても、気づかないうちに実家が"空き家化"していくケースは少なくありません。本記事では、空き家化の初期サイン、放置によるリスク、相続に直結する法律上の問題を、司法書士の視点からわかりやすく解説します。

目次

  1. 年末は実家の状態を"客観的に見られる"唯一の機会
  2. 空き家化は突然ではなく"静かに進む"
  3. 年末帰省で必ず見るべき実家のチェックポイント
  4. 空き家状態が招く法律・相続トラブル
  5. 売却・賃貸を妨げる「所有者不明化」リスク
  6. 早期対策の重要性と、司法書士ができる支援
  7. まとめ — 年末点検は「家族を守る最初の一歩」

1.年末は実家の状態を"客観的に見られる"唯一の機会

 年末年始は、普段は離れて暮らす家族が久しぶりに集まる時期です。
 普段は電話やLINEで感じる「元気そう」の印象も、実際に帰省して実家の様子を見ると、「あれ? 雰囲気が去年と違う」と気づくことが少なくありません。

 司法書士として相談を受けていると、「もう少し早く気づいていれば、空き家の問題がここまで大きくならなかったのに」というケースが多く見られます。

 家は、年単位で静かに劣化し、気づいたときには対処が難しくなっていることもあります。
だからこそ、"家族みんなが帰省する年末"は、実家をチェックする最良の時期なのです。

2.空き家化は突然ではなく、"静かに進む"

 空き家とは「人の居住や使用が無い状態の家」のことを指しますが、実務では次のような"空き家化の前段階"がよく問題になります。

  • 親が入院や施設入所で不在がち
  • 物置状態になり、生活の気配が薄い
  • 片づけが追いつかず、危険な状態
  • 修繕がされず、外観が明らかに劣化している

 これらは、まだ人が住んでいても**"準・空き家"**と呼ばれる段階です。
この段階で見過ごすと、相続時に以下の問題が一気に顕在化します。

  • 実家の売却が難しい
  • 修繕費が高額になる
  • 相続人の誰も住まず、管理ができない
  • 近隣クレームが発生する
  • 相続登記をしていないと、権利関係が複雑化する

 空き家化は「放置の結果」ではなく、むしろ気づかないうちに進行しているケースがほとんどです。

3.年末帰省で必ず見るべき実家のチェックポイント

 司法書士として現場で見てきた経験から、「ここを見れば実家の危険度がわかる」というポイントを整理します。

外観の劣化

  • 庭木が伸び放題、雑草が膝丈
  • 外壁のヒビ、屋根の破損
  • 郵便受けのチラシが溜まっている
    → 管理が行き届いていないサイン。

室内の生活感

  • 生活動線にゴミや物が散乱
  • 冷蔵庫が空に近い
  • 電球が切れたまま
    → 高齢の親が管理に手が回っていない可能性。

防犯・防災の状況

  • 窓の施錠が甘い
  • 古いブレーカー・コンセント
    → 空き巣・火災リスクが上昇。

隣近所との関係

  • 「最近、お母さん見ないね」
  • 「庭の木が境界にはみ出してるよ」
    → 近隣トラブルの兆候は見逃さない。

名義・相続に関する書類の有無

  • 権利証/固定資産税通知
  • 相続関係の資料が整理されていない
    → 後で探すより、今確認した方が間違いなく負担が少ない。

4.空き家状態が招く法律・相続トラブル

 空き家化すると、単に「家が古くなる」だけでは済みません。
司法書士の実務では、次のような深刻な問題につながるケースが後を絶ちません。

固定資産税の負担が増える

管理が不十分な"特定空家"に認定されると、固定資産税が最大6倍に跳ね上がることがあります。

倒壊・火災などの賠償責任

管理不全の空き家から火災が起きると、所有者に多額の損害賠償責任が発生することも。

いざ売却しようとしたら、修繕費だけで数百万円

外壁・屋根・給水設備など、空き家期間が長いほど劣化は加速します。

相続時に兄弟間の意見が割れる

「残す/売る/貸す」で意見がまとまらず、実家が"争族"の原因に。

こうしたトラブルの多くは、年末の段階で気づいていれば防げたものばかりです。

5.売却・賃貸を妨げる「所有者不明化」リスク

ここが、司法書士として最も強調したいポイントです。

実家が老朽化し、誰も住まなくなると、
「売却して現金化しよう」
「賃貸で活用しよう」
という判断が家族内で出てきます。

ところが――
名義が古いままだと、ここで一気に動けなくなります。

  • 祖父名義のまま
  • 亡くなった父の名義のまま相続未登記
  • 兄弟が増えて共有者が複数人
  • 連絡が取れない相続人がいる

この状態になると、
売ることも貸すことも、手続きさえ前に進まない
典型的な"所有者不明化問題"に直結します。

相続登記義務化(2024年4月開始)によって、未登記放置は法的な罰則の対象となり、さらに問題が顕在化しやすくなりました。

年末帰省では、
「この家の名義、誰のまま?」
を確認するだけで、将来の負担を大幅に減らせます。

6.早期対策の重要性と、司法書士ができる支援

実家問題は、早く動くほどコストも負担も小さくなるのが現実です。

司法書士として行えるサポートは次のとおりです。

  • 名義(登記)の現状調査
  • 相続関係図の作成
  • 相続登記の一括手続き
  • 不動産の売却・贈与を見据えた登記相談
  • 遺言書作成のサポート
  • 共有者が多い場合の整理方法の提案

「まだ大丈夫」は一番危険な判断です。
年末に気づいた違和感のうちにご相談いただければ、問題は必ず小さくできます。

7.まとめ — 年末点検は「家族を守る最初の一歩」

 実家の管理は、家族の将来に直結する大切なテーマです。
特に今年は、相続登記義務化以降「名義放置」のリスクが大きく取り上げられています。

 だからこそ、
"帰省した時に気づけること"は、その年のうちに対策する
これが最重要です。

 空き家化の初期サインや名義の確認は、家族の資産を守る確実な一歩。
司法書士として、年末の今だからこそ、ぜひ実家を見直していただきたいと思います。

(無料相談会のご案内)

生前対策・相続対策に関する無料相談は随時受付中です(完全予約制)。

📞 電話予約:087-873-2653

🌐 お問い合わせフォームはこちら

📆 土日祝も可能な限り対応いたします。

また、相続税対策・登記相談も含めた無料相談会も開催中です:

・第3水曜開催:087-813-8686(要予約)

・詳細はこちら:相談会ページへ

香川県外にお住まいの方も、オンライン・Zoomでのご相談が可能です。お気軽にお問い合わせください。

最新のブログ記事

令和8年1月14日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。

年末は、実家の「今」を確認できる貴重なタイミングです。親が元気に暮らしていても、気づかないうちに実家が"空き家化"していくケースは少なくありません。本記事では、空き家化の初期サイン、放置によるリスク、相続に直結する法律上の問題を、司法書士の視点からわかりやすく解説します。

2024年に成立した「民法等の一部改正」によって、離婚後の親権・養育費・親子交流に関するルールが大きく変わります。今回の改正は、これまで"片方の親が親権をもつ"ことが原則だった日本の制度を見直し、より柔軟に、そして「子どもの最善の利益」を中心に考える仕組みへと転換するものです。
この記事では、司法書士として離婚・相続などの相談を数多く受けてきた立場から、一般の方にも分かりやすく改正内容を整理してお伝えします。

司法書士試験の勉強で「過去問を解いても点が伸びない」と感じていませんか?
合格者の共通点は、過去問の"使い方"を知っていることです。
本記事では、年内に実践したい「過去問分析」「条文整理」「理解から得点への転換術」を、独学者にもわかりやすく解説します。

<