第1回:空き家・休耕地・無人の実家──“負動産”が増え続ける理由

2025年12月15日

相続といえば「財産を受け継ぐ」ものと思われがちですが、近年では"負の遺産"──いわゆる「負動産(ふどうさん)」が社会問題となっています。
空き家や使い道のない土地が増え続ける背景には、人口減少・家族構成の変化・登記未了など、複数の要因が絡んでいます。本記事ではその現実を司法書士の視点で解説します。

📖目次

  1. 負動産とは何か──「相続=プラス資産」の誤解
  2. 増え続ける空き家と休耕地の実態
  3. 家族構成の変化と"無人の実家"問題
  4. 登記が進まない土地と相続人の負担
  5. 今後10年で起きる「負動産爆発」への備え
  6. まとめ──「負動産」を生まない相続を考える

1. 負動産とは何か──「相続=プラス資産」の誤解

 「相続すれば財産が増える」と思われがちですが、実際の現場では"もらって困る財産"が増えています。
 それが「負動産(ふどうさん)」です。

 負動産とは、維持費・税金・管理負担ばかりかかり、売却も貸出も難しい不動産のこと。
 固定資産税が毎年かかり、空き家特例の対象外になれば税額が1.5倍以上に跳ね上がるケースもあります。
 また、老朽化した建物を放置すれば「特定空家」として行政指導の対象になるリスクも。
 相続人が複数いる場合、誰も引き取りたがらず、遺産分割協議が何年もまとまらないことも少なくありません。

2. 増え続ける空き家と休耕地の実態

 総務省の調査によると、全国の空き家は約900万戸(住宅総数の13%)を超え、今後も増加が続くとされています。
 地方では「住む人がいなくなった実家」「相続したが使い道のない土地」「草木に覆われた畑」など、管理されない不動産が急増中です。

 香川県内でも、実家を残したまま都会で生活を続ける方が多く、
「いつか戻るつもりだったが、気づけば誰も住まなくなった」という相談を受けることが増えています。

 このように「利用されない不動産」が全国的に積み重なり、行政も手が回らなくなっているのが現実です。

3. 家族構成の変化と"無人の実家"問題

 かつての日本では「実家を継ぐ長男」が明確でしたが、
 現在は兄弟姉妹がそれぞれ独立し、実家に戻らないケースが圧倒的に多くなっています。

 親が亡くなった後、誰も住まない実家がそのまま放置され、
草木が生い茂り、屋根が崩れ、近隣から苦情が出て初めて家族が動く──そんな光景は決して珍しくありません。

 「遠方だから様子を見に行けない」「処分の話を切り出しづらい」といった心理的ハードルも、
負動産が増える大きな要因です。

4. 登記が進まない土地と相続人の負担

 相続登記をしないまま放置されている土地が全国で約1,000万筆以上あるといわれています。
 この状態では、名義が亡くなった親のまま。売ることも貸すこともできず、
次の世代へと「管理できない土地」が受け継がれていきます。

 こうした問題を解消するために、2024年4月から相続登記の義務化がスタートしました。
相続を知ってから3年以内に登記をしないと過料(罰金)の対象となります。

 しかし、負動産の多くは「相続人が多すぎて話がまとまらない」「誰も引き取りたくない」ため、
義務化が進んでも根本的な解決には至らない可能性があります。

5. 今後10年で起きる「負動産爆発」への備え

 このまま高齢化と人口減少が進むと、
2040年には全国の空き家率が30%を超えると予測されています。
 つまり、3軒に1軒が"誰も住まない家"になる可能性があるということです。

 この「負動産爆発」に備えるためには、

  • 親が元気なうちに不動産の処分や活用を検討する
  • 遺言書で所有者を明確にしておく
  • 子ども世代が早めに家族会議を開く
    といった"生前対策"が欠かせません。

 司法書士としては、「所有者が不明な土地を次世代に残さない」ことが最大のポイントだと考えています。

6. まとめ──「負動産」を生まない相続を考える

 負動産の問題は、決して特別なケースではありません。
 どの家庭にも起こりうる「現代の相続リスク」です。

「親の家をどうするか」「名義をどう整理するか」を、
元気なうちに話し合っておくことが、結果的に家族全員の負担を減らします。

 次回は、実際に"負動産"をめぐって行われる遺産分割協議の現場と、
どのようにして合意形成を図っていくのかを詳しく解説します。

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