相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
第3回:「共有者が協力しないとき」──法的手段と“実務での落としどころ”

共有不動産の解消を進めたくても、共有者の一人が反対したり、音信不通だったりするケースは少なくありません。
今回は、そんな「話し合いがまとまらない」共有不動産をどう扱うか──
法的な手段と、司法書士が現場で実践する"落としどころ"をわかりやすく解説します。
■目次
- なぜ共有者の同意がネックになるのか
- よくある「協力しない共有者」のパターン
- 法的手段①:共有物分割請求訴訟
- 法的手段②:持分売却による解消
- 実務での"落としどころ"──話が進まないとき
- まとめ──「手を打てるうちに動く」のが最大の防御
1. なぜ共有者の同意がネックになるのか

相続で複数人の名義となった不動産を「共有」といいます。
この共有状態の最大の特徴は、一部の人が単独では処分できないという点です。
たとえば売却や賃貸などの「処分行為」には、原則として共有者全員の同意が必要。
たとえ持分が少なくても、一人が反対すれば全体の取引が止まってしまいます。
しかも、共有者の一人が亡くなった場合、その持分がさらに相続されて"細分化"されていきます。
こうして、**実務上の"合意形成困難"**という問題が発生します。
2. よくある「協力しない共有者」のパターン

司法書士として相談を受けるなかで、協力しない共有者のタイプにはいくつかの傾向があります。
- 💬 感情型:「兄弟仲が悪くて話したくない」
- 💰 利益型:「今は動かない方が得」と考えている
- 🕓 無関心型:「忙しい」「興味がない」「放置でいい」
- 🚫 不明型:住所がわからず連絡が取れない
どのタイプであっても、共通しているのは「全員の同意がなければ動かない」という現実です。
ここから、どのように法的・実務的に進めていくかが重要になります。
3. 法的手段①:共有物分割請求訴訟

共有者の一人が「このままでは困る」と思ったときに使えるのが、共有物分割請求です。
民法第256条により、共有関係はいつでも分割を請求できると定められています。
訴訟では、裁判所が次のような方法で解消を命じます。
- 現物分割(物理的に分ける)
- 代償分割(一方が取得し、他方に代償金を払う)
- 競売分割(売却して代金を分ける)
つまり、**「話し合いができないなら、最終的には裁判で決着できる」**のです。
もっとも、訴訟には時間と費用がかかり、関係修復はほぼ不可能になります。
いきなり裁判ではなく、**「その前段階での調整」**を重視するのが現実的です。
4. 法的手段②:持分売却による解消
共有者の同意が得られない場合でも、自分の持分を売る自由は認められています。
民法上、共有者は自らの持分を第三者に譲渡できます。
たとえば「自分の持分だけ売りたい」という場合、他の共有者が買い取るか、
場合によっては不動産業者が"共有持分"を買い取ってくれることもあります。
ただし注意が必要です。
第三者に売却した場合、新たな共有者が登場することで、関係がさらに複雑化することがあります。
一方、他の共有者が買い取れば、共有が解消に近づくので、まずは身内での買取検討が現実的です。
この際、農地などの特殊な土地では農地法の許可が必要になる場合があります。
しかし、前回紹介したように、「持分放棄」という方法を使えば許可不要で進められるケースもあるため、争いがない場合は司法書士に事前相談することが望ましいです。
5. 実務での"落としどころ"──話が進まないとき

法律論だけでは解決できない「人の問題」が圧倒的に多いです。
たとえば次のようなステップで、実務的に解消を目指します。
※ただし、争いが表面化、顕在化している状態では、弁護士に相談してください。
(1)登記簿・相続関係の整理
まずは登記簿を確認し、全員の住所・持分・相続関係を明確にします。
「共有者がどこにいるか分からない」場合でも、住民票や戸籍附票で所在を追うことが可能です。
(2)意思確認と書面化
口頭での話し合いよりも、「どの方法を希望するか」を書面にまとめることで、後の誤解を防ぎます。
たとえ1人が反対していても、他の共有者の意見を整理しておくことは次のステップにつながります。
(3)第三者専門家の介入
感情的な対立が強い場合、弁護士を交えて「中立的な場」を設けます。
「相続登記+共有解消プラン」の提案を行うことで、実務的な見通しを共有者に提示できるのです。※司法書士では、争いを相続人の1人のために調整することは弁護士法に抵触するため、必ず弁護士にご相談ください。
(4)放棄・買取・訴訟の選択肢を整理
- 放棄できる場合は早期解決
- 買取できる場合は単独化
- 難しい場合は最終的に裁判
こうした"現実的な三段構え"を共有者に示すことで、
「いずれ裁判になるくらいなら、いま話し合おう」という空気をつくるのが実務のポイントです。
6. まとめ──「手を打てるうちに動く」のが最大の防御
共有不動産は、放置すればするほど問題が増えます。
共有者が亡くなれば、次の世代の相続で持分はさらに細分化し、合意形成は困難に。
だからこそ、
- 連絡が取れるうちに方針を決める
- 法的リスクを理解しておく
- 専門家と一緒に実務的な"着地点"を探す
この3つが重要です。
司法書士は、法的手続きの専門家であると同時に、**人と人との間を調整する"実務家"**でもあります。
早めの相談が、トラブルを最小限に抑える第一歩です。

■(無料相談会のご案内)
「共有者の一人が協力してくれない」「連絡がつかない」──
そんな状態でも、まだできることはあります。
高松市の アイリス国際司法書士・行政書士事務所 では、
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※裁判手続きは弁護士にご相談ください。
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