第5回:「“書いたあと”が本当のスタート」──遺言の保管・見直し・伝え方

2025年12月05日

遺言書を書いた瞬間に、すべてが終わるわけではありません。
むしろ大切なのは「書いたあと」。
どこに保管するか、家族にどう伝えるか、そして人生の変化に応じて見直すこと──。
今回は、遺言書を"生きた書類"として活かすためのポイントを、司法書士がやさしく解説します。

目次

  1. 「書いたら終わり」ではない、遺言書の本当の役割
  2. 保管──安心して残すための3つの方法
  3. 見直し──5年に一度は内容チェックを
  4. 伝え方──"開けられない遺言書"にしないために
  5. 司法書士がサポートできること
  6. まとめ──遺言は、家族への"未来の手紙"

1. 「書いたら終わり」ではない、遺言書の本当の役割

 多くの方が、「遺言書を書き終えた」ことで安心します。
 けれど実際には、そこからが本当のスタートです。

 遺言書は、**書いた本人の意思を未来に届けるための"生きた書類"**です。
 保管の仕方、家族への伝え方、内容の見直し――
どれかひとつが欠けても、「せっかく作ったのに使えない」状況になりかねません。

 司法書士としてご相談を受ける中でも、
「遺言書が見つからなかった」「古い内容のままだった」
といったケースが少なくありません。

 大切なのは、**"書いてからも動かす"**こと。
その意識が、家族の安心を守ります。

2. 保管──安心して残すための3つの方法

 せっかく作った遺言書も、見つからなければ意味がありません。
 まずは、**「どこに保管するか」**を明確にしておきましょう。

(1)自宅で保管する場合

最も手軽ですが、火災・紛失・改ざんのリスクがあります。
金庫や防火キャビネットなど、安全な場所を選びましょう。
ただし、「どこに保管しているか」を家族が知らないと、
遺言が発見されずに相続が進んでしまうこともあります。

(2)法務局の「自筆証書遺言書保管制度」

自筆証書遺言を法務局で預けられる制度です。
保管証が発行され、検認も不要になるため、近年非常に利用が増えています。
全国の法務局で申請可能です。
※内容の確認までは法務局は行いませんので、司法書士の事前確認がおすすめです。

(3)公証役場で保管(公正証書遺言)

公正証書遺言の場合は、原本が公証役場に保管されます。
家族は「遺言書検索システム」で確認でき、紛失の心配がありません。
最も確実性が高く、将来的な発見漏れがほとんどない方法です。

3. 見直し──5年に一度は内容チェックを

 遺言書は、一度書いたら一生そのままでいい…というものではありません。
 人生が変われば、財産も家族関係も変わります。

以下のようなタイミングでは、必ず内容を見直すことをおすすめします。

  • 相続人(配偶者・子・兄弟など)の変動
  • 不動産の売却・購入
  • 会社退職・年金開始・相続税制度の改正
  • 孫の誕生や家族構成の変化
  • 家族間の関係性の変化(再婚・介護・別居など)

 特に「5年に一度」は、**"遺言の健康診断"**として司法書士などの専門家に確認してもらうと安心です。
 小さな変更なら「付言事項(メッセージ部分)」の書き換えでも十分効果があります。

4. 伝え方──"開けられない遺言書"にしないために

 書いた遺言書が、誰にも知られないまま押し入れに眠っている…
この状態が、もっとも危険です。

 遺言書は「いつ・どこで・誰が」確認できるかを明確にしておくことが大切です。

伝え方のポイント

  1. 信頼できる家族に"存在"だけを伝える
     内容までは話さなくても、「遺言書を作成した」「保管場所は○○」だけは伝えましょう。
  2. 遺言執行者を決めておく
     司法書士や信頼できる第三者を「遺言執行者」に指定しておくと、
     相続開始後もスムーズに手続きが進められます。
  3. エンディングノートとセットで
     財産の分け方だけでなく、葬儀・お墓・デジタル資産など、
     "想い"の部分をエンディングノートに記しておくと、家族にとっての道しるべになります。

5. 司法書士がサポートできること

 司法書士は、遺言書を「書く前」から「書いたあと」まで、一貫して支援できます。

  • 保管制度の手続き代行
  • 公証役場との調整・立ち会い
  • 見直しや改訂時の助言
  • 遺言執行者としての実行支援

 特に「書いた遺言をどう活かすか」は、専門家の関与で大きく変わります。
"使える遺言"にするためにも、定期的な点検と伴走支援をぜひ活用してください。

6. まとめ──遺言は、家族への"未来の手紙"

 遺言書は、「財産を分けるための書類」ではなく、家族へのメッセージです。
 保管・見直し・伝え方という3つの工夫を加えることで、
それは「残す」だけでなく、「つながる」遺言になります。

 人生は変化します。だからこそ、遺言も更新していいのです。
 書いたあとも、定期的に見返して、あなたの想いを未来につなげてください。

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