親権・養育費・親子交流に関する民法改正(2024〜2026施行予定) ー 離婚後の「子どものためのルール」が大きく変わります ー

2025年12月22日

2024年に成立した「民法等の一部改正」によって、離婚後の親権・養育費・親子交流に関するルールが大きく変わります。今回の改正は、これまで"片方の親が親権をもつ"ことが原則だった日本の制度を見直し、より柔軟に、そして「子どもの最善の利益」を中心に考える仕組みへと転換するものです。
この記事では、司法書士として離婚・相続などの相談を数多く受けてきた立場から、一般の方にも分かりやすく改正内容を整理してお伝えします。

目次

  1. 今回の民法改正はなぜ行われたのか
  2. 主な改正ポイント
     2-1. 離婚後の「共同親権」の導入
     2-2. 養育費のルール強化(法定養育費)
     2-3. 親子交流(面会交流)の適正化
     2-4. 財産分与・情報開示などの手続き強化
  3. 注意点(DV・虐待ケースへの対応)
  4. 施行時期と既に離婚している方への影響
  5. 今回の改正のポイント
  6. まとめ

■ 1. 今回の民法改正はなぜ行われたのか

 今回の改正の中心となっている考え方は、
「離婚しても、親の責任は続く」
という原則です。

 日本では長らく、離婚後はどちらか一方が親権者となる「単独親権」が原則でした。しかし、社会の変化や国際的な標準をふまえて、次のような課題が指摘されてきました。

  • 離婚後、子どもと会えなくなる親が一定数いる
  • 養育費の未払いが後を絶たない
  • 親権を巡って争いが深刻化しやすい
  • 子どもが両親とかかわる機会が十分確保されない場合がある

 こうした背景から、今回は 「子どもの最善の利益」を一番に考える制度へ と、大きな見直しが行われました。

■ 2. 主な改正ポイント

◆ 2-1. 離婚後の「共同親権」が選べるように

これまで日本では、離婚後は必ず「どちらか一方の親」が親権者でした。
今回の改正により、

離婚後の

  • 共同親権
  • 単独親権

のいずれかを選べるようになります。

【共同親権が選べる場合】

  • 夫婦が話し合いで合意できたとき
  • 合意できないときは家庭裁判所が判断

【単独親権となる場合】

  • DV・虐待のリスクがある
  • 協力関係が難しく子どもの利益を害する場合
  • 裁判所が単独親権が妥当と判断したとき

つまり、
共同親権が万能になったわけではなく、「子どものために協力できるか」が重要
という仕組みに変わります。

◆ 2-2. 養育費のルール強化(法定養育費の導入)

養育費の未払いは日本でも深刻な問題です。今回の改正では、

養育費の合意がない場合でも

一定の基準額(法定養育費)を請求できる制度
が導入されます。

金額は政令で定められる予定です。

さらに、

養育費の取り立て(強制執行)が簡素化

  • 一度の申立てで複数手続を同時に進められる
  • 相手方の収入情報について裁判所が開示を命じられる

など、実効性が高まりました。

◆ 2-3. 親子交流(面会交流)の適正化

離れて暮らす親と子どもの関わり(親子交流)についても、次のような整備が行われます。

  • 交流の合意内容をより明確に記載
  • 子どもの安全確保を前提に、裁判所が内容を決める際の基準を強化
  • 子どもの意見を丁寧に反映する仕組み

単に「会える・会えない」の二択ではなく、
子どもが安心して会えるかどうかを重視した制度 になります。

◆ 2-4. 財産分与・情報開示などの手続き強化

今回の改正では、養子縁組・財産分与といった周辺部分も整理され、

  • 財産分与の算定・手続きの明確化
  • 相手の所得や資産の情報開示の強化

など、より実効的な制度となりました。

■ 3. 注意点(DV・虐待ケースへの特別配慮)

 共同親権が選べるようになったことで懸念されるのが、DVや虐待があるケースです。

改正法では、

  • DV・虐待がある場合は共同親権を認めない
  • 裁判所が事実関係を丁寧に審査する

と明記されています。

 この点は、子どもの安全を守るための重要な歯止めです。

■ 4. 施行時期と既に離婚している方への影響

 改正法の施行は

▶ 2026年5月までの政令で定める日(原則:公布から2年以内)

となっています。

なお、

すでに「単独親権」で離婚している方

→ 自動的に共同親権に変わることはありません。

共同親権を希望する場合は、改正後に 家庭裁判所へ親権者変更の申立て をする必要があります。

■ 5.今回の改正のポイント

 司法書士として感じる今回の改正の核心は、
親権ではなく「子の利益」を軸に制度が再構築されたこと
です。

  • 親の権利争いではなく「子どものために何が最善か」
  • 養育費や交流の実効性が高められた
  • 共同親権の導入で選択肢が広がった

 特に養育費の履行確保や、情報開示制度の強化は、現場で長年課題とされてきた点であり、今回の改正で大きく前進したと言えます。

■ 6. まとめ

 民法改正は、離婚や子どもの養育に関わる方にとって非常に重要な内容です。
しかし、

  • 自分の場合は共同親権と単独親権のどちらがいいのか
  • 養育費はいくらになるのか
  • 親子交流をどのように取り決めるべきか

など、個別事情によって最適な答えは変わります。

実際の効力を求められるからは、弁護士に相談することをお勧めします。

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