遺言書は、法律に基づいて作成される文書で、遺産の分配やその他の希望を法的に拘束力を持って定めるものです。日本では、民法に基づいて遺言書の作成方法が規定されており、法的に有効な遺言書を作成するためには、一定の要件を満たす必要があります。
①遺言書の種類
(1)自筆証書遺言: 遺言者が自らの手で全文、日付、氏名を記載し、押印する形式です。法的に有効であるためには、形式的な要件を満たす必要があります。
(2)公正証書遺言: 公証人が作成し、遺言者および証人2名の立会いのもとで署名・押印される遺言書です。信頼性が高く、紛失や改ざんのリスクが低いです。
(3)秘密証書遺言: 遺言者が署名・押印し、封をした遺言書を公証人に提出して確認を受ける形式です。
➁遺言書の利点
(1)法的効力: 遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載された内容が法的に実行されます。これにより、遺産の分配やその他の希望が確実に実現されます。
(2)明確な指示: 遺産の分配方法や特定の希望を明確に指示することで、遺族間の争いを未然に防ぐことができます。
(3)遺言執行者の指定: 遺言書に遺言執行者を指定することで、遺産の分配をスムーズに行うことができます。
③遺言書の限界
(1)作成の複雑さ: 法的要件を満たすためには、形式や内容に厳格な規定があるため、作成が複雑です。特に公正証書遺言の場合、公証人との面談や証人の確保が必要です。
(2)費用: 公正証書遺言を作成する場合、公証人への報酬や証人への謝礼が必要となり、費用がかかります。
3.効力の違い
エンディングノートと遺言書の最大の違いは、その法的効力にあります。エンディングノートは本人の意思を伝えるためのツールであり、法的拘束力はありません。一方、遺言書は法律に基づいて作成されるため、記載内容が法的に実行されます。このため、具体的な遺産分配や法的手続きを必要とする希望がある場合は、遺言書を作成することが重要です。
ただし、エンディングノートは、遺言書の補完的な役割を果たすことができます。例えば、遺言書には記載しにくい感情的な内容や、日常の希望、細かな指示などをエンディングノートに記載することで、遺族や関係者に対して総合的な意思を伝えることができます。
4.結論
言語化することの大切さは、人生の終末期において特に顕著です。エンディングノートと遺言書を併用することで、法的な手続きと感情的な意志の双方をバランスよく伝えることができます。エンディングノートは感情や希望を自由に表現できる一方で、法的効力を持たないため、重要な法的事項については遺言書を作成することが求められます。この二つのツールを適切に活用することで、自身の意思を確実に伝え、遺族や関係者が安心して後の手続きを進めることができます。
今まで携わった相続関連業務で、公正証書遺言を作成した後にお迎えが車が来るまで少し話をした時のことです。一仕事終えたというのと、これでひとまず安心という気持ちから、いろいろなことを話しました。会社を心配されていたのですが、相続人の方が引き受けてくれるという意思表示があったことを大変喜んでいました。その時心から「良かったですね。本当に。これで心配事がずいぶん減ったんじゃないですか?」というと、何かほっとしたような顔をされていました。そしてその数か月後に亡くなったのですが、今までの経緯をすべて日記にしたためていたようで、相続人の方全員からすごく感謝されました。この経験から改めて、人の大事な意思表示のお手伝いができるということについて、これからも継続して行っていこうと思いました。勿論、新しい取り組みも含め、「不安」を「安心」に代えていけるよう続けていこうと思います。