相続の相談でいちばん多い失敗は、
「税理士に行ったら登記の話ができず、司法書士に行ったら税金が分からない」ことです。
「“認知症と相続”──判断能力が失われる前にできる準備とは」

認知症は誰にでも起こり得る身近な問題です。もし判断能力を失ってしまったら、財産の管理や相続の準備はどうなるのでしょうか?本人の意思が反映できなくなり、家族が思わぬ困難に直面することも少なくありません。本記事では、認知症と相続の深い関わりをわかりやすく解説し、「元気なうちに備えること」の大切さをご紹介します。
目次
- 認知症と相続の意外な関係
- 判断能力が失われたら何ができなくなるのか
- 家族が直面する3つの現実的なリスク
- 認知症になる前にできる生前対策の具体例
- 実際の相談事例から学ぶ「備えの重要性」
- まとめ──"想定外"を避けるために
1. 認知症と相続の意外な関係

日本では高齢化が急速に進み、65歳以上の5人に1人が認知症を発症する時代が目前に迫っています。香川県内でも「親が施設に入ったけれど財産の整理が進まない」「相続の話をしたいが本人に判断力がなくなってしまった」という声が増えています。
相続というと「亡くなったときに発生するもの」と思われがちですが、実は認知症の発症がその前に大きな壁として立ちはだかるのです。なぜなら、相続の準備に必要な手続きは「本人の意思表示」が前提になるからです。
2. 判断能力が失われたら何ができなくなるのか

一度判断能力が失われると、以下のようなことができなくなります。
- 遺言書の作成
有効な遺言書を残すには「意思能力」が必要です。認知症が進行して判断が難しくなれば、遺言を作ること自体が無効になる可能性があります。 - 不動産の売却や名義変更
施設費用や介護費用をまかなうために自宅を売りたい、という場面でも、本人の署名・捺印がなければ売却できません。 - 生前贈与や信託契約
子や孫に財産を譲りたいと考えても、契約の理解ができない状態では実行不可能です。
つまり「認知症になる前にしかできない手続き」が多く存在し、時間との戦いでもあるのです。
3. 家族が直面する3つの現実的なリスク

認知症と相続が重なると、家族には次のようなリスクが待ち受けています。
① 財産が"凍結"される
銀行口座が使えず、介護費用や生活費が出せない。
② 不動産が動かせない
売却も活用もできず、空き家が放置されるリスクが高まる。
③ 相続時に争いが起きやすい
「本人の意思が分からない」ことで、兄弟姉妹間の話し合いがまとまらず、争続へと発展することも少なくありません。
これらの問題は、家族に精神的・経済的な負担を大きく残すことになります。
4. 認知症になる前にできる生前対策の具体例

認知症と相続のリスクを回避するには、「元気なうちに準備する」しかありません。代表的な方法を3つご紹介します。
(1)遺言書の活用
公正証書遺言を作成しておけば、判断能力があるうちに「財産の分け方」を確実に残せます。後々、争いを避ける強力な武器になります。
(2)任意後見制度
将来、判断能力が低下したときに備えて「この人に財産管理を任せたい」と決めておく仕組みです。家族が安心してサポートできる体制を整えられます。
(3)家族信託
「親の財産を子が管理しつつ、親の生活費や介護費用に充てる」といった柔軟な仕組みです。相続登記義務化とも相性がよく、近年注目度が高まっています。
これらを組み合わせることで、認知症が進行しても財産が適切に管理され、家族が困らずに済むようになります。
5. 実際の相談事例から学ぶ「備えの重要性」

当事務所に寄せられたご相談の中に、次のようなケースがありました。
- ケース1:遺言が間に合わなかった例
80代のお母様が認知症を発症。相続人である兄弟が話し合いを始めたが、遺言がなく意見がまとまらず、家庭裁判所での調停に発展。結果、時間も費用もかかってしまった。 - ケース2:家族信託でスムーズに対応できた例
一方で、別のご家族は70代の段階で家族信託を締結。認知症発症後も子が代理して施設費用を支払い、不動産も活用できた。相続も事前に定めたルール通りに進み、争いは起きなかった。
この対比が示す通り、「準備の有無」がその後の家族の負担を大きく左右します。
6. まとめ──"想定外"を避けるために
認知症は誰にでも訪れる可能性があります。そして一度発症すれば、財産管理や相続の準備は一気に難しくなります。
「まだ元気だから大丈夫」と思っている今こそ、備えを始めるタイミングです。遺言・任意後見・家族信託といった制度を使いこなすことで、将来の"想定外"を防ぎ、家族を守ることができます。
生前対策は「家族への最大のプレゼント」と言っても過言ではありません。

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**「不動産 × 認知症 × 義務化」**がどれほど危険かをお伝えしてきました。
しかし本当に大切なのは、あなたの家が今どの状態なのかです。
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