遺産分割協議書(相続開始前後の使途不明金の取り決め)

2024年05月14日

相続発生前に、被相続人(亡くなった方)が自ら出金し消費していた事実が分かっている場合には、特に問題とはなりませんが、被相続人の預金の管理を相続人お一人が管理していた場合、多額の使途不明金が生じていた場合、どのようにすればいいのでしょうか。

目次

1.相続発生前の使途不明金の取り扱い

2.相続発生後の使途不明金の取り扱い

3.まとめ


1.相続発生前の使途不明金の取り扱い

 被相続人A、相続人B・Cで、BがAの講座の管理をしており、使途不明金500万円が生じている場合

 「第〇条 相続人B及び相続人Cは、次の財産が被相続人A(年月日死亡)の遺産であることを確認し、これをBが取得するものとする。

  X銀行Y支店普通預金(口座番号123456)の使途不明金500万円に係る被相続人AのBに対する返還請求権」とします。

 Bが生前Aの預金を管理していた場合には、AとBとの間に「預金の管理に関する委任契約が成立」していたと考えられるため、使途不明となったAの預金について、被相続人Aは、管理の受任者である相続人Bに対して、返還請求権(民法646条1項)又は損害賠償請求権(民法709条)という「相続財産」が発生することになるためです。当然、Aの債権はB・Cに相続されます。Bは自分が負うこれらの債務との相殺をすることになり、Cは、相続で受けた権利をBに対して返還請求することとなります。

2.相続発生後の使途不明金の取り扱い

 遺産分割前に遺産に属する財産が処分された場合であっても、共同相続人は、その全員の同意により、当該処分した財産を遺産分割の対象に含めることができます。(民法906条の2 1項)

 また、共同相続人の一人または数人により財産が処分されたときは、当該共同相続人以外の共同総ぞ属人全員の同意によって、遺産分割の対象とすることができます。(民法906条の2 2項)

 この条項は、民法改正により追加されたものです。当初は、共同相続人全員の同意がないと、処分された財産について、遺産に含めることはできませんでした。そうすると、処分した相続人が、仮に反対した場合、処分された財産は遺産に含めることができなくなるため、勝手に処分した相続人の同意は不要とされています。

(事例)

 被相続人Aが死亡し、相続人の子供B・Cがいたとします。財産は、被相続人Aが居住していた家と土地、そして現金200万円があったはずなのですが、200万円がいつの間にかなくなっていることに気づきました。

 ①BはCが盗んだと疑っており、Cは否定しています。しかし、お互い消えた200万円を遺産に含めることに争いがない場合、200万円は遺産分割の対象とすることができます。

 ➁現金200万円をCが勝手に使ったことが判明しました。BはCの同意がなくても、現金200万円が遺産分割の対象とすることができます。

 つまり、民法906条の2で言っているのは、共同相続人に消えた財産を遺産分割の対象にすることに争いがなければ、対象とすることができるし、勝手に処分した方が判明している場合、その方の同意がなくても、他の共同訴z九人全員の同意で、遺産分割の対象とすることができると言っています。

3.まとめ

 財産の使い込みなどの処分について、相続発生前後において、法律上生じる根拠が異なることが分かります。相続開始前だと、委任契約における受任者の責任として、そして、相続発生後において、共同相続人全員の同意で、亡くなった財産を遺産分割の対象にすることができますし、使い込んだ相続人が判明している場合には、その財産を遺産分割の対象とすることに、当該相続人の同意は不要とされています。

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