遺言条項に「予備的遺言」を入れること

2023年06月04日

遺言書を作成しても、相続させる相手が遺言者より先に亡くなった場合、対象財産を遺言者が生前に処分した場合、その内容は有効にはなりません。その場合、「予備的遺言」をすることで無効とならないようにすることができます。予備的遺言とは?解説いたします。

目次

1.予備的遺言とは

2.事例で見る遺言書のケース

3.事例で予備的遺言があった場合

4.予備的遺言を使う場合

5.まとめ


1.予備的遺言とは

 予備的遺言とは、相続人又は受遺者が、遺言者の死亡以前に死亡する場合等に備えて、遺言者が、あらかじめ、財産を相続させる者又は受遺者を予備的に定めておく遺言です。 (補充遺言ともいいます。)

2.事例で見る遺言書のケース

 (事例)

 「父親と長男、次男がいるケースで考えます。父親が、ある日自分の自宅を長男に相続させたいと考え、「自宅を長男に相続させる」旨の遺言書を作成しました。

 その後、父親は介護施設に入るための資金が必要になり、自宅を1000万円で売却し、これに充てました。

 さらにその後、父親はなくなり相続が開始され、「遺言書」が出てきました。」

 さて、この場合、長男に相続させるべき自宅は既に売却されていますよね。

 長男は「自分に自宅を相続させると言ってるのだから、介護施設にかかった費用の500万円を差し引いて、500万円は私のものだ。」といい、次男は「それはおかしい、自宅はもうないのだから、残った500万円の半分は自分に相続権がある。」といいます。

 誰が正しいのでしょうか。

(解答)

「(前の遺言と後の遺言との抵触等)

民法第1023条 前の遺言が後の遺言と抵触するときは、その抵触する部分については、後の遺言で前の遺言を撤回したものとみなす

2 前項の規定は、遺言が遺言後の生前処分その他の法律行為と抵触する場合について準用する。

(遺言書又は遺贈の目的物の破棄

民法第1024条 遺言者が故意に遺言書を破棄したときは、その破棄した部分については、遺言を撤回したものとみなす。遺言者が故意に遺贈の目的物を破棄したときも、同様とする。」とあります。

 つまり、初めの遺言書と抵触する内容を次の遺言書で記載した場合、その初めの遺言書の抵触する部分は、撤回されたものとみなされます

 また、遺言書に記載した対象物を生前に処分してしまった場合も、撤回みなしが適用されます。

 次男さんが言っていたことが正しいということになります

 しかし、遺言書の中で「予備的遺言」をしておけば、長男さんに残りの500万円を残すことができます。

3.事例で予備的遺言があった場合

 当該遺言書内で「1.自宅は長男に相続させる。 2.相続発生前に遺言者が自宅を処分した場合には、その処分した価額から生前に使った費用の差額を長男に相続させる。」としておけば、長男が500万円を受け取ることになります。

4.予備的遺言を使う場合

 ①相続させる子供が遺言者より先に死亡した場合を想定して孫へ相続させる旨

 ➁相続させる配偶者が遺言者より先に死亡した場合の財産の帰属先について

 ③遺言者が対象財産を生前に処分した場合の後の財産の帰属先について

 などが考えられます。

5.まとめ

 このように、遺言書の書き方は民法に規定された通り書けば、有効に機能いたします。専門家に相談して、「想い」を確実に残されたご家族に届けられるようにしましょう。

 アイリスでは、遺言書作成のサポートを実施しております。ヒアリングを実施し、最適な内容の遺言書作成をご提案いたします。

自筆証書遺言サポート:35,000円(税抜)~

公正証書遺言サポート:80,000円(税抜) (証人1名につき日当10,000円(税抜))~

最新のブログ記事

令和7年5月14日(水)に「北野純一税理士事務所」内で開催されます「相続法律・税務無料相談会」が実施されます。相続前のご相談、相続発生後のご相談、どちらにも対応しております。

相続登記の際、遺産分割協議書は非常に重要な書類となります。しかし、時折相談者から「やってもいない遺産分割協議についての協議書が送られてきた」といった疑問や不安の声が寄せられることがあります。このような場合、法令に違反している可能性もありますが、協議の認識に誤解がある場合も少なくありません。本稿では、遺産分割協議書が郵送された場合の対応方法や注意すべき点について、実際の事例を交えながら解説します。

相続が発生した際、遺産をどのように分割するかを決定するために、相続人全員で遺産分割協議を行います。遺産分割協議書は、その合意内容を正式に書面で残すものであり、特に不動産の相続登記を行う際に必須の書類となります。しかし、この協議書の内容が不備であったり、相続人全員の同意が得られていない場合、後々のトラブルを招くことがあります。本稿では、遺産分割協議書を作成する際に注意すべき点について詳しく解説し、トラブルを未然に防ぐための対策を考察します。

相続が発生した際、不動産の所有権移転を行うためには、相続登記を行う必要があります。一般的な相続登記では、父親が死亡し、配偶者と子供が相続人となるケースがよく見られます。この際に必要となる添付書類は、法定相続分による登記と、二次相続対策として子供に所有権を移転する場合で異なります。特に二次相続に備えるための所有権移転には慎重な準備が必要です。本稿では、それぞれのケースでの必要な書類を整理し、どのように進めるべきかを解説します。

<