(論点)中小企業診断士の補助金申請支援は行政書士の独占業務に該当するのか?──現状と各資格の業務範囲

2025年06月16日

補助金・助成金の申請支援を行う中小企業診断士の業務が、行政書士の独占業務にあたるのではないかという指摘があります。本記事では、それぞれの資格の業務範囲と、実際に行政側や関係団体から出されている見解をもとに、現状の法的整理と注意点について事実ベースで解説します。

【目次】

  1. 中小企業診断士と補助金申請支援業務
  2. 行政書士の独占業務の範囲
  3. 両者の業務の境界に関する実際の議論
  4. 行政や団体からの公式な見解
  5. 実務上の対応と注意点
  6. 参考資料・公的ソース

1. 中小企業診断士と補助金申請支援業務

 中小企業診断士は、中小企業支援法に基づく国家資格者であり、経営課題への診断・助言を行うことが主な業務です。特に昨今では、事業再構築補助金、小規模事業者持続化補助金、IT導入補助金など、補助金申請に関する支援業務の需要が高まっています。

 多くの中小企業診断士が、補助金の公募要領の解釈や事業計画書の作成に関するアドバイスを行っており、これ自体は診断士の職域に含まれるとされています。

2. 行政書士の独占業務の範囲

 一方、行政書士は行政書士法に基づき、「官公署に提出する書類その他権利義務・事実証明に関する書類」の作成・提出代行を業として行うことができるとされています。これらの業務は行政書士の独占業務とされており、無資格者が有償で代行することは原則として禁止されています(行政書士法第1条の2、第19条等)。

 補助金や助成金の申請書類は、官公署に提出する公的書類に該当するため、その作成や提出を報酬を得て代行する行為は行政書士でなければできないとされています。

3. 両者の業務の境界に関する実際の議論

 近年、補助金申請支援を行う中小企業診断士や、無資格のコンサルタント事業者が増加する中で、「どこまでが助言で、どこからが違法な代行に当たるのか」が問題視されています。

 特に、申請書の作成代行を請け負い、報酬を得て代理で作成・提出まで行う行為は、行政書士の独占業務に該当する可能性が高く、行政書士会からも注意喚起がなされてきました。

4. 行政や団体からの公式な見解

日本行政書士会連合会の見解

 日本行政書士会連合会では、補助金申請書類の作成・提出を有償で代行する行為は行政書士の業務に該当するとして、たびたび無資格者による申請代行に対して注意を呼びかけています。

 具体的には以下のような主張が見られます:

  • 「補助金申請書の作成・提出は行政書士の業務」
  • 「無資格者が行った場合、行政書士法第19条違反の可能性がある」
  • 「添削や助言にとどまる業務は必ずしも違法ではない」

総務省の関連通達

 2019年には総務省から「行政手続の適正化に関する検討報告書」が公表され、その中で、行政書士による書類作成業務の周知と、無資格代行の防止が求められました。

5. 実務上の対応と注意点

 中小企業診断士として補助金支援を行う場合、以下のような点に留意することが望ましいとされています:

  • 書類の最終的な作成者・提出者はあくまで事業者本人であること
  • 診断士は内容に対する助言や添削、計画立案支援を行う立場にとどまること
  • 報酬を得ての「作成代行」や「提出代行」は行わないこと

 契約書や業務説明書にも、「申請支援業務は助言にとどまる」旨を明示し、行政書士法に抵触しないよう配慮するケースが一般的になってきています。

6. 参考資料・公的ソース

 以下の資料やページが、今回の論点に関する公式な見解を確認するうえで有用です:

  • 日本行政書士会連合会:
     https://www.gyosei.or.jp/
     (「行政書士の業務に関するQ&A」など)
  • 総務省「行政手続の適正化に関する検討報告書」(2019年)
     https://www.soumu.go.jp/main_content/000619758.pdf
  • 各都道府県行政書士会の注意喚起ページ
    (例:「補助金申請業務における無資格代行について」など)

【まとめ】

 「補助金申請支援を行う中小企業診断士の業務が、行政書士の独占業務に該当するかどうかについては、書類の「作成」「提出」「報酬」の有無によって明確に線引きされています。診断士が助言にとどめる限りは問題ありませんが、代行行為に踏み込むと法的リスクを伴うため、十分な注意と業務設計が求められます」という話を聞きました。ただし、まだはっきり明確に分かりませんので、所属団体に見解をご確認ください。

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