一般的な利益供与とは、企業や個人が商取引やビジネスにおいて取引相手や顧客に対して提供する利益やサービスです。これは通常、法に触れることなく、契約や商習慣の範囲内で行われます。
例えば、企業が顧客に対して優遇措置を提供することや、取引相手に対して商談後に接待を行うこと、従業員に対してボーナスや福利厚生を提供することなどは、利益供与の一例です。これらの行為は、ビジネス関係の維持や向上、従業員の士気向上を目的としています。また、これらの利益供与は透明性があり、社会的に容認されている範囲内で行われているため、一般的には違法とはみなされません。
ただし、利益供与が過度に偏ったり、不当な優遇を受ける場合には、他の競合企業や関係者から不満が生じる可能性があります。そのため、企業は利益供与の方法や範囲について慎重に検討する必要があります。
2. 法令上禁止されている利益供与
一方で、法令上禁止されている利益供与は、公正な取引や社会秩序を乱す行為とされ、刑事罰や行政処分の対象となります。具体的には、贈収賄や不正競争防止法に違反する行為、コンプライアンス上問題のある行為が該当します。
(1)贈収賄
贈収賄は、特に公務員や政治家に対する利益供与が問題視されます。贈賄とは、金銭や物品を提供して公務員に違法な便宜を図らせる行為であり、収賄とは、逆に公務員がそのような便宜を提供する代わりに金銭などを受け取る行為です。日本の刑法第197条では、公務員がその職務に関連して賄賂を受け取ることを禁じており、違反した場合には重い刑罰が科されます。
たとえば、企業が公共工事の受注を目的として、公務員に金銭やギフトを提供し、その見返りに便宜を図ってもらう行為は、明確な贈収賄となります。贈収賄は、公共の信頼を損ない、社会の公平性を揺るがすため、厳しく取り締まられています。
(2)不正競争防止法
不正競争防止法では、企業間での不正な取引や利益供与が規制されています。具体的には、営業秘密の不正取得や不正な利益供与による取引誘引行為などが該当します。たとえば、競合他社の顧客リストを違法に取得し、それを基に利益供与を行って取引先を奪う行為などは、不正競争防止法に違反します。
また、贈収賄とは異なり、民間同士の取引でも、不適切な利益供与は問題となります。特定の企業や取引先に対して過度な優遇措置を取ることや、リベートを受け取る代わりに特別な取引条件を設ける行為も、場合によっては不正競争とみなされることがあります。
(3)コンプライアンス上の問題
企業の社会的責任(CSR)やコンプライアンスの観点からも、利益供与には厳しい目が向けられています。特に国際的な企業では、国境を越えた贈収賄防止法規(たとえば、米国の外国腐敗行為防止法〈FCPA〉や英国の贈収賄法〈UK Bribery Act〉)が適用されるため、利益供与の基準が非常に厳格です。これらの法令は、外国の公務員への賄賂供与を厳しく取り締まっており、違反した場合には巨額の罰金が科される可能性があります。
企業が国際的に事業を展開する際には、各国の法令に適合した形で利益供与の範囲を設定する必要があります。特に、第三者を介した間接的な利益供与や、業界の慣習として行われている接待やギフトの提供も、法令違反となるリスクがあるため、細心の注意が求められます。
3. 利益供与の線引き