第三者行為による労災事故では、労災保険を利用するか、第三者に直接損害賠償請求をするかの選択肢があります。労災保険を利用する場合、労働者は治療費や休業補償などの一定の補償を迅速に受けることができますが、その後、第三者に対して損害賠償請求を行う際には、労災保険で支払われた分は重複して請求できないという制約があります。
具体的には、労災保険を利用して支払われた治療費や休業補償は、労災保険側が第三者に「求償権」を行使することで回収します。このため、労働者が第三者に直接損害賠償請求を行う際には、労災保険で受けた補償を差し引いた分を請求することになります。
一方、労災保険を利用せず、第三者に直接損害賠償請求を行うことも可能です。ただし、この場合は、労災保険の迅速な補償を受けられないため、賠償が確定するまでの間、治療費や生活費の負担が大きくなる可能性があります。
3. 労災と第三者行為の手続き
労災保険を利用する場合、通常の労災申請と同じ手続きを行います。ただし、第三者行為による場合には、追加で「第三者行為災害届」を提出する必要があります。この届出は、労働基準監督署や労働局に提出され、事故の詳細や第三者の情報を明らかにするためのものです。
届出が受理されると、労災保険から治療費や休業補償が支払われますが、労災保険側が第三者に対して求償権を行使し、労災保険で支払った分を第三者に請求します。これにより、労働者は迅速に補償を受けつつ、第三者に対しても責任を追及することが可能となります。
4. 第三者行為による労災の具体例
具体的な例として、通勤中の交通事故が挙げられます。労働者が通勤中に他の車と衝突し、その車の運転手に過失があった場合、労災保険の通勤災害として治療費や休業補償を受けることができます。同時に、その事故の加害者に対して、慰謝料や逸失利益などの損害賠償請求を行うこともできます。
また、業務中に他社の過失で事故が発生した場合も同様です。例えば、建設現場で他社の重機が倒れて負傷した場合、その重機を運営していた企業に対して損害賠償請求を行うことが可能です。このような場合でも、労災保険を利用して補償を受けつつ、第三者に対して損害賠償請求を行うことができます。
5. 第三者行為の注意点