死亡保険金は、通常、相続財産には含まれません。これは、保険契約に基づいて特定の受取人に直接支払われるため、遺産分割協議の対象外とされるためです。そのため、生命保険金を受け取った受取人は、相続財産の分割に関しては基本的に影響を受けません。
しかし、例外的に「みなし相続財産」として相続税の対象となる場合があります。以下にその詳細を説明します。
4. 死亡保険金と相続税
死亡保険金は遺産には含まれないものの、相続税の課税対象となることがあります。ただし、一定の非課税枠が設けられており、法定相続人が受け取る保険金については、非課税限度額があります。
4.1. 非課税限度額
非課税限度額は、次の計算式で求められます。
「非課税限度額 = 500万円 × 法定相続人の人数」
例えば、法定相続人が3人いる場合、500万円×3=1,500万円が非課税限度額となり、この額までは相続税が課されません。それを超える金額については、相続税の対象となります。
4.2. 法定相続人以外の受取人の場合
受取人が法定相続人以外の人(例えば、友人や恋人)である場合、生命保険金は、非課税枠の適用は受けられません。
5. 死亡保険金と遺産分割の関係
死亡保険金は遺産分割協議の対象外であり、指定された受取人が保険金を単独で受け取る権利を持ちます。しかし、法定相続人の一部が受取人となり、他の相続人が全く保険金を受け取れない場合、相続人同士で感情的な対立が生じることがあります。このような場合、受取人が得た保険金の一部を相続財産として考慮し、遺産分割協議で調整することもありますが、法的には義務ではありません。
5.1. 遺留分への影響
相続人には、最低限の相続分である「遺留分」が法律で保障されています。死亡保険金は遺産には含まれませんが、場合によっては遺留分を巡る争いの原因となることもあります。例えば、全財産を特定の相続人に譲る内容の遺言書があった場合でも、他の相続人は遺留分減殺請求を行うことが可能です。しかし、死亡保険金自体はこの請求の対象とはなりません。
6. まとめ
死亡保険金受取人と法定相続人には、それぞれ異なる役割と権利が存在します。死亡保険金は保険契約によって指定された受取人が直接受け取るものであり、相続財産には含まれません。そのため、遺産分割協議の対象外ですが、相続税の課税対象にはなる場合があります。
法定相続人が死亡保険金の受取人である場合、一定の非課税枠が適用され、課税負担が軽減される一方で、受取人が法定相続人以外の場合は、相続税が全額課税されることに注意が必要です。相続手続きを円滑に進めるためには、事前に受取人や相続人の権利を十分に理解しておくことが重要です。