遺留分とは、法定相続人が最低限確保できる相続分です。被相続人が全財産を特定の相続人や第三者に譲渡する遺言を残した場合でも、遺留分を持つ相続人は「遺留分侵害額請求権」に基づき、自身の遺留分を確保する権利があります。
2.1. 遺留分を持つ者
遺留分は、以下の法定相続人に限られます。
配偶者
子供(代襲相続人を含む)
直系尊属(両親や祖父母など)
兄弟姉妹には遺留分がありません。つまり、兄弟姉妹が相続人であっても遺留分請求を行うことはできません。
2.2. 遺留分の割合
遺留分は、相続財産全体の一定割合を相続人に保証するものです。遺留分の具体的な割合は以下の通りです。
直系尊属のみが相続人の場合:相続財産の1/3
その他の相続人がいる場合(配偶者や子供がいる場合):相続財産の1/2
遺留分は相続人全員で分割されます。例えば、配偶者と子供がいる場合、遺留分の半分を配偶者が、残りの半分を子供が分け合います。
2.3. 遺留分侵害額請求権
遺留分が侵害されている場合、相続人は遺留分侵害額請求権を行使できます。この請求権により、相続人は遺留分を超えて取得した者(通常は他の相続人や受遺者)に対して、侵害された遺留分に相当する金銭の返還を求めることができます。遺留分請求は、相続開始後1年以内に行使しなければならず、これを過ぎると請求権は消滅します。
3. 遺言書と遺留分の関係
被相続人は遺言書によって、遺産を自由に配分することが可能です。しかし、法定相続人が遺留分を侵害される形で遺言が作成されていた場合、遺留分請求を行うことができ、遺言通りに全財産を特定の相続人や第三者に譲渡することはできません。
3.1. 遺言書による財産配分の自由
遺言書は、被相続人が自分の財産を誰にどのように分配するかを指定するための強力な手段です。しかし、遺言書の内容が遺留分を侵害している場合、相続人から遺留分侵害額請求を受けるリスクがあります。そのため、遺言を作成する際には遺留分を考慮することが重要です。
3.2. 遺留分を侵害しない遺言の作成
遺留分を侵害しないように遺言を作成することが、相続トラブルを避けるためのポイントです。遺言者は、遺留分に配慮して遺産配分を計画し、遺言内容を法的に有効に保つために、専門家のアドバイスを受けることが推奨されます。
4. 遺留分の放棄
遺留分は原則として保障されていますが、相続開始前でも放棄することが可能です。相続開始前においては、遺留分を放棄する場合、家庭裁判所の許可が必要です。
4.1. 遺留分放棄の手続き
遺留分の放棄は、相続開始前に家庭裁判所に対して申立てを行い、許可を得ることで有効となります。この手続きにより、放棄した相続人は遺留分の請求権を失い、遺産分割の際にも遺産を受け取る権利を失います。
4.2. 放棄の影響
遺留分を放棄した場合、その相続人は相続財産を一切受け取ることができなくなります。これにより、他の相続人や受遺者に対して遺留分請求を行うことができなくなるため、相続財産の分割がシンプルになります。
5. 遺留分を巡る相続トラブル