まず、相続できないものとして代表的なのが「一身専属権」です。これは被相続人の個人的な権利や義務であり、その人自身に密接に関連しているため、他人が引き継ぐことができないものです。一身専属権には次のようなものがあります。
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(1) 身分関係に基づく権利義務
被相続人の身分に直接関連する権利や義務は、相続することができません。たとえば、親権、後見人としての権利義務、婚姻関係に基づく権利などは、一身に帰属するものであり、被相続人が亡くなった時点で消滅します。具体的には、次のようなものが該当します。
親権: 親が子供に対して有する親権は、親の死亡に伴い消滅します。親権は新たな親権者や後見人が家庭裁判所によって選任されるため、相続の対象にはなりません。
後見人としての義務: 法定後見や任意後見の後見人は、被後見人に対して責任を負いますが、後見人が死亡した場合、その義務は相続されず、新たな後見人が選任されます。
婚姻関係に基づく権利義務: 婚姻に基づく扶養義務や配偶者としての権利義務も相続の対象にはならず、被相続人の死亡により婚姻関係は終了します。
(2) 委任契約
被相続人が生前に行っていた業務委任契約や、弁護士や税理士などとの委任契約も相続されません。これらは被相続人自身の信頼に基づく契約であり、被相続人が死亡すると契約は終了します。もっとも、委任契約のうち未払いの報酬などについては相続の対象となる場合があります。
(3) 労務に基づく権利
被相続人が労働者として勤務していた場合、その労働契約も死亡によって終了します。労務の提供は個人に依存するものであり、相続の対象にはなりません。たとえば、給与や労働時間に関する権利は被相続人が持つものであり、死亡時点で契約は終了します。ただし、未払いの給与や退職金は相続財産として扱われることがあります。
2. 生命保険金
生命保険金は被相続人の死亡に伴い支払われるものですが、通常、保険金受取人が指定されている場合、生命保険金は受取人固有の権利として扱われます。そのため、生命保険金は相続財産には含まれません。具体的には次のような場合があります。
保険契約: 保険契約者(被相続人)が死亡した際、保険金受取人として指定された人が生命保険金を受け取ります。この場合、生命保険金は受取人の財産となり、相続財産には含まれません。
税務上の取扱い: 税務上は、生命保険金は相続税の課税対象となることがありますが、それでも相続財産とは区別され、受取人に直接支払われます。
ただし、生命保険金が過剰な額である場合や特定の相続人に対して偏った支給が行われた場合、他の相続人が異議を唱え、裁判所で「特別受益」として考慮されることもあります。この場合、相続財産の一部として評価される可能性があります。