(論点)相続登記で「公衆用道路」の漏れを防ぐための固定資産税評価証明書・名寄帳の活用法と評価額の算出方法

2025年06月18日

相続登記を進めるうえで見落としがちなのが、固定資産税が課税されていない不動産、特に「公衆用道路」の存在です。納税通知書には課税対象の不動産しか記載されないため、これに頼って登記対象を確定すると、相続登記の対象不動産に漏れが生じる可能性があります。特に公衆用道路は、評価額が「0円」と表示されていることが多く、その存在に気づきにくいのが現実です。本記事では、相続登記において公衆用道路の見落としを防ぐために取得すべき書類や、評価額が「0円」とされている土地の適切な評価方法について詳しく解説します。

目次

  1. 公衆用道路とは?
  2. 相続登記でなぜ「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」が必要なのか
  3. 納税通知書だけでは不十分な理由
  4. 評価額が0円の場合の対応方法
  5. 評価額の算出:2つの方法
  6. 事前確認の重要性とまとめ

1. 公衆用道路とは?

 「公衆用道路」とは、登記簿上で用途が「公衆用道路」となっている土地を指します。私道でありながらも、通行に供されているものが該当し、多くは無償で地域住民や公衆に開放されています。こうした土地は公共性が高いため、固定資産税が課税されない場合が多く、評価額も「0円」と表示されるのが一般的です。

2. 相続登記でなぜ「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」が必要なのか

 相続登記にあたって、所有しているすべての不動産を正確に把握することは極めて重要です。「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」は、市町村が管理する不動産情報を一覧にした書類であり、納税通知書に載っていない非課税の土地、すなわち「公衆用道路」なども記載されます。これらの書類を取得することで、不動産の漏れを防ぎ、相続登記を漏れなく進めることができます。

3. 納税通知書だけでは不十分な理由

 納税通知書には、固定資産税が課される不動産しか記載されていません。そのため、課税対象外となる公衆用道路や共有名義の私道、場合によっては山林などが記載されていないことがあります。納税通知書だけを基に相続登記を行うと、こうした不動産の存在に気づかず、将来のトラブルや再登記の手間につながる恐れがあります。

4. 評価額が0円の場合の対応方法

 名寄帳や評価証明書で「公衆用道路」が記載されていたとしても、その評価額が「0円」である場合、登記手続きで問題となることがあります。登録免許税の算出には評価額が必要なため、「0円」では計算できないのです。そこで必要になるのが、「近傍宅地の価格」を参考にした評価額の算出です。

5. 評価額の算出:2つの方法

 評価額が「0円」の場合、以下の2つの方法で評価額を算出することが可能です。算出式は、近傍宅地の1㎡あたりの価格 × 面積 × 0.3 です(※乗率0.3は通常の私道評価の基準)。この計算にあたり、近傍宅地の価格を取得するには次の2通りの方法があります。

法務局に申請して価格調査を依頼する方法

 管轄法務局に申請し、評価額が「0円」とされている土地の近隣宅地の価格調査を依頼します。法務局は適正な資料に基づいて評価額の参考情報を出してくれるため、正確性と公的な根拠が伴う方法です。時間がかかることもありますが、確実性を求める場合には推奨されます。

市町村(役場)で近傍宅地の金額を記入してもらう方法

 一部の自治体では、申請者が申し出ることで、固定資産税評価証明書の備考欄などに近傍宅地の評価額を記載してくれることがあります。この方法は法務局よりもスピーディーで、自治体によっては柔軟に対応してくれることもあります。

6. 事前確認の重要性とまとめ

 上記2つの方法のどちらが適用できるかは、地域や法務局・市町村によって異なります。そのため、登記申請前に必ず管轄法務局に相談し、どの方法で評価額を算出するか確認することが重要です。

まとめ

  • 相続登記では、「公衆用道路」など非課税の土地に注意が必要です。
  • 納税通知書だけでは不動産の全容は把握できないため、「名寄帳」や「固定資産税評価証明書」の取得が必須です。
  • 評価額が「0円」の場合には、近傍宅地価格×面積×0.3で評価額を算出し、登録免許税を算定します。
  • 法務局への申請、市町村での記入、どちらの方法が使えるかを事前に確認しましょう。

見落としや再登記の手間を防ぐためにも、初めの一歩から丁寧に準備を行うことが、円滑な相続登記の鍵となります。

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