(論点)遺産分割協議で注意する5つの点

2024年12月31日

遺産分割協議を行う際には、多くの注意点が存在します。特に相続人間のトラブルを避け、公正かつスムーズに進めるためには、以下の5つのポイントを押さえることが重要です。

目次

1. 遺言書の確認

2. 相続人全員の参加

3. 遺産の範囲の確定

4. 遺留分の侵害に注意

5. 税金の問題を把握する


1. 遺言書の確認

 遺産分割協議を始める前に、被相続人(亡くなった方)の遺言書があるかどうかを確認することが最優先です。遺言書には、被相続人の意思が反映されており、その内容に従って遺産を分割する必要があります。公正証書遺言であれば家庭裁判所の検認は不要ですが、自筆証書遺言の場合は検認手続きが必要です。この検認を経ずに遺産分割を進めると、後々トラブルに発展する恐れがあるため、手続きは適切に進める必要があります。遺言が存在しない場合は、相続人全員で遺産分割協議を行うことになります。

2. 相続人全員の参加

 遺産分割協議は、相続人全員の合意がなければ成立しません。1人でも協議に参加していない相続人がいる場合、その遺産分割協議は無効となり、後に無効確認訴訟が提起される可能性があります。したがって、遺産分割協議を行う前に、全ての相続人を特定し、全員に参加してもらうことが重要です。例えば、被相続人が再婚していた場合や、認知した子がいる場合は、相続人が誰になるのかを慎重に確認し、全員が協議に加わるよう手配します。

3. 遺産の範囲の確定

 遺産分割協議を円滑に進めるためには、相続財産の範囲を正確に確定することが不可欠です。不動産や預貯金、有価証券、車両など、遺産に該当する財産を一つ一つ確認し、全ての相続人に情報を共有します。加えて、借金や未払金といったマイナスの財産も考慮する必要があります。相続財産の範囲を明確にしておかないと、後で財産が見つかった場合に再度協議が必要になり、相続人間での紛争が起こる原因になります。また、不動産の登記簿謄本や預貯金通帳の確認を怠ると、財産の過少申告や隠匿が疑われることがあり、信頼関係にヒビが入ることもあります。

4. 遺留分の侵害に注意

 遺産分割協議を進める際に、遺留分についても注意が必要です。遺留分とは、一定の相続人(主に配偶者、子、直系尊属)に保障される最低限の相続分であり、被相続人が遺言で遺留分を無視して財産を分配することはできません。遺留分を侵害された相続人は「遺留分減殺請求権」を行使して、侵害された分の財産を取り戻すことができます。そのため、遺産分割協議の際には、遺留分を侵害しないように慎重に財産を分配することが大切です。特に、生前贈与や偏った遺言があった場合は、他の相続人の遺留分が減少していないか確認する必要があります。

 ただ、中には、この協議の時に財産をもらわないようにしたので「相続放棄」したと勘違いされている方がとても多いです。この状態で、亡くなった方に多額の借金が判明した場合、遺産をもらわなかった相続人も債務を法定相続分負うことになります。※相続を知ったときから3ケ月以内に家庭裁判所に申述しないと、相続放棄(初めから相続人ではなかった)ができなくなりますので注意が必要です。

5. 税金の問題を把握する

 遺産分割に関連する税金、特に相続税の問題も見逃せません。遺産分割協議によって相続税の額が大きく変わることがあります。例えば、土地や株式など流動性の低い資産を相続する場合、後にそれらの資産を売却しない限り、現金をすぐに得ることができず、相続税の支払いに苦労することがあります。また、分割の内容次第で、配偶者控除や未成年者控除、小規模宅地の特例などが適用される場合がありますので、相続税を少しでも軽減するために、適切な分割方法を考える必要があります。さらに、相続税の申告期限は相続開始後10か月以内と定められているため、遺産分割協議を早期に進めることが望まれます。

 これら5つのポイントに注意しながら遺産分割協議を進めることで、相続人間のトラブルを最小限に抑え、スムーズに協議を完了することが可能です。遺産分割は感情的な問題が絡みやすく、相続人の間に対立が生まれやすい手続きです。したがって、必要であれば、専門家である司法書士や弁護士の助言を受けながら進めることが、長期的なトラブル回避に役立つでしょう。また、遺言書の作成や、生前対策をしっかり行うことで、相続人への負担を軽減することも重要です。

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