(論点)離婚後、別れた子供が財産を拒否する理由(贈与や保険金受取人の指定が引き起こす問題点)

2025年05月08日

離婚後に親が相続対策を進める際、過去に別れた配偶者との間にできた子供に財産を贈与しようとするケースや、生命保険の受取人としてその子供を指定する場合があります。しかし、このような提案に対して、子供が財産を受け取ることを拒否する場面も少なくありません。なぜなら、単純に親からの財産を受け取ることが利益にならない、もしくは心理的・実務的な理由で負担となることがあるからです。本稿では、そうした背景を具体的に解説し、子供が財産を受け取ることを躊躇する主要な理由を考察していきます。

目次

  1. 老後の介護を期待されることへの懸念
  2. 過去の感情的な確執
  3. 公平性や他の兄弟姉妹への配慮
  4. 既に自立した生活を確立している場合
  5. 他の親族との関係悪化を恐れる
  6. 税金や法律上の問題を懸念

1. 老後の介護を期待されることへの懸念

 親が子供に財産を贈与することで、子供に老後の介護を期待しているのではないかという懸念を抱かせることがあります。特に離婚後に親子関係が疎遠になっている場合、突然の財産贈与や保険金受取の提案は、子供にとって将来的に親の介護責任を押し付けられるのではないかという不安を生むことがあります。子供にとって、財産を受け取ることが心理的な負担となり、介護負担を回避するために拒否するケースが考えられます。

2. 過去の感情的な確執

 離婚後に親子関係が冷え込んでいる場合、親が財産を贈与しようとしても子供はそれを受け入れられないことがあります。親との関係に対する心理的な抵抗や、親に対する不満や傷ついた感情が残っている場合、財産を受け取ることで感情的な負担が増す可能性があります。特に、親が自分の人生にあまり関与してこなかったと感じる場合、今さら財産を受け取ることに意味を見出せないという理由で拒否されることがあります。

3. 公平性や他の兄弟姉妹への配慮

 分かれた親との間に異母兄弟や異父兄弟がいる場合、財産を受け取ることが他の兄弟姉妹との間で不公平感を生むと感じることがあります。財産の分配が不平等になると、兄弟姉妹との関係が悪化する恐れがあり、それを避けるためにあえて財産を受け取らないという選択をすることがあります。親子関係だけでなく、兄弟間のバランスを考慮して、トラブルを回避しようとする姿勢が見られるのです。

4. 既に自立した生活を確立している場合

 子供がすでに自立し、安定した生活を送っている場合、親からの財産を必要としないと感じることがあります。特に経済的に余裕があり、追加の財産が必須ではない場合には、無用なトラブルや管理の煩雑さを避けたいと考え、財産を受け取らない選択をすることがあります。こうした場合、子供にとって財産の有無が生活に大きな影響を与えるものではないため、関わりたくないという感情が働くのです。

5. 他の親族との関係悪化を恐れる

 相続や贈与を巡るトラブルが親族間で発生することは珍しくありません。特に親が再婚して新たな家族ができている場合、その家族との間で関係が悪化することを恐れて財産を受け取らないことがあります。親族間の争いに巻き込まれたくない、もしくは家族関係を壊したくないという思いから、財産を受け取らない選択をするケースも多いです。分かれた親との関係だけでなく、新たな家族や親族との調和を優先する姿勢が見られます。

6. 税金や法律上の問題を懸念

 贈与税や相続税の負担が発生する可能性がある場合、子供はそのコストを避けるために財産を受け取らないことがあります。特に、贈与や保険金受取後の財産管理や税金支払いに対する責任を負いたくないと感じることが理由になることがあります。また、財産を受け取ることが法律上の義務や責任を伴うことを懸念し、そのリスクを避けるために財産を拒否することも考えられます。特に、負債が含まれる財産の場合、債務の引き継ぎを避けたいと考えるのは自然な流れです。

結論

 離婚後、親が生前に分かれた子供に対して財産を贈与しようとする場合や保険金の受取人に指定する場合、子供がその提案を拒否することは珍しくありません。老後の介護を期待されることや過去の感情的な確執、兄弟姉妹との関係悪化の懸念、さらには税金や法律上の問題など、さまざまな理由が絡み合って子供が財産の受け取りを拒否する要因となります。親子間の関係だけでなく、周囲の状況や実務的な負担が子供の選択に影響を与えるのです。心情面などを配慮しながら、取り組まなければならないと思います。

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