「地番変更を伴わない行政区画の変更」の取り扱い

2023年01月16日

 先日、登記を実行した後に地番の変更を伴わない町名変更があることがわかり、取下申請をした時の話です。先例では、地番の変更を伴わない行政区画の変更については「変更登記を要しない」ことが示されていますが、この事案に直面したとき多くの資料にあたり気づいたことがありましたので、記録として残しておくことにいたします。

多くの司法書士事務所のホームページに、「地番変更を伴わない行政区画の変更」で、変更登記を要しない根拠として、不動産登記規則の条文

「(行政区画の変更等)

第九十二条 行政区画又はその名称の変更があった場合には、登記記録に記録した行政区画又はその名称について変更の登記があったものとみなす。字又はその名称に変更があったときも、同様とする。」

を根拠としているケースがありました。

画像を見ていただくとわかる通り、不動産登記規則92条は、「表示に関する登記」の条文であり、「権利に関する登記」の条文ではないことがわかります。

 でも、実際に「地番の変更を伴わない行政区画の変更」の登記は、しなくても所有権移転登記や抵当権の抹消などの登記を実行できます。それでは根拠はいったいどこにあるのでしょうか? 

①登記情報593号

「行政区画の変更は、住居表示の実施、地番変更を伴う町名変更等と異なり、地方自治法第259条等の規定により官報等に告示されるものであるとともに、地方自治体のホームページ等を閲覧することにより、容易に確認することができるものである。

 そのため、およそ行政区画の変更は、すべて公知の事実であると考えることができる。

 したがって、所有権の移転、抵当権の設定その他の登記の申請の際に、登記義務者の住所が、行政区画の変更により変更されているものの、その変更の登記がされていない場合であっても、行政区画の変更がすべて公知の事実であることからすれば、不動産登記法第25条第7号に規定する「登記義務者(略)の住所が登記記録と合致しないとき」には該当しないと考えるべきと思われる。

 なお、自己の管轄登記所以外の地域に係る行政区画の変更の事実を登記官が確認する手段として、実務上の取扱いとしては、例えば、申請人からの聴取に加え、その住所を管轄する登記所の登記官に対して、電話等により照会して確認することも考えられる。

 また、住所の移転はなく、行政区画の変更のみがあった場合において、「行政区画の変更」を登記原因とする登記名義人の住所の変更の登記申請があったときは、当然これを認めて差し支えないものと考える。」

➁登記研究第748 号48 頁

地番変更を伴わない行政区画の変更が行われた場合は,当該行政区画の変更は,公知の事実であることから,所有権の移転等の前提登記として行政区画の変更による登記名義人の住所変更の登記を申請する必要はない。ただし,この場合でも,行政区画の変更による登記名義人の住所変更の登記を申請しても差し支えない。」とあります。

つまり、「公知の事実」だから、変更登記を要しないわけです

当然、地番の変更を伴っている場合には、変更登記は義務ですので、所有権移転登記や抵当権の抹消登記を申請する場合、当該変更登記がないと却下又は取下げ対応が必要となりますので、注意が必要です。(受付番号・日付が変わるということ)

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