「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を 閣議決定
令和5年3月3日付、国土交通省発表から「空家等対策の推進に関する特別措置法の一部を改正する法律案」を 閣議決定した旨の発表がありました。今後の空き家対策としてそのように変更されたのかを解説します。
目次
1.法改正の背景
2.改正法案の概要
3.改正法案の目標と効果
4.まとめ
1.法改正の背景
「近年、空き家の数は増加を続けており、今後、更に増加が見込まれる中、空き家対策の強化が急務となっております。
この法律案は、こうした状況を踏まえ、周囲に悪影響を及ぼす特定空家等の除却等の更なる促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前の段階から空家等の有効活用や適切な管理を確保し、空き家対策を総合的に強化するものです。」
また、資料では、居住目的のない空き家は、この20年で1.9倍、今後も増加していくと予想されます。(1998年182万戸→2018年349万戸→2030年見込み470万戸)除却等のさらなる促進に加え、周囲に悪影響を及ぼす前の有効活用や適切な管理を総合的に強化する必要性に迫られたための今回の改正に至ったものです。
2.改正法案の概要
「所有者責務強化」:現行の「適切な管理の努力義務」に加えて、国・自治体の施策に協力する努力義務を課します。
①活用の拡大
㋐空家当活用推進区域(例:中心市街地、地域の再生拠点、観光振興を図る区域等)
- 市区町村が区域や活用指針等を定め、用途変更や建替え等を促進
⇒安全確保等を前提に接道に係る前面道路の幅員規制を合理化
⇒指針に合った用途に用途変更等する場合の用途規制等を合理化
- 市区町村長から所有者に対し、指針に合った活用を要請
㋑財産管理人による所有者不在の空家の処分(詳細は3.③後掲)
㋒支援法人制度
- 市区町村長がNPO法人、社団法人等を空家等管理活用支援法人に指定
- 所有者等への普及啓発、市区町村※から情報提供を受け所有者との相談対応
※事前に所有者同意
- 市区町村長に財産管理制度の利用を提案
➁管理の確保
㋐特定空家化を未然に防止する管理※修一著しい悪影響を及ぼす空家
- 放置すれば特定空家になるおそれのある空家(管理不全空家)に対し、
管理指針に即した措置を、市区町村長から指導・勧告
- 勧告を受けた管理不全空家は、固定資産税の住宅用地特例(1/6等に減額)
を解除
㋑所有者把握の円滑化
- 市区町村から電力会社等に情報提供を要請
③特定空家の除却等
㋐状態の把握
- 市区町村長に報告徴収権(勧告等を円滑化)
㋑代執行の円滑化
- 命令等の事前手続を経るいとまがない緊急時の代執行制度を創設
- 所有者不明時の代執行、緊急代執行の費用は、確定判決なしで徴収
㋒財産管理人※による空家の管理・処分(管理不全空家、特定空家等)
- 市区町村長に選任請求を認め、相続放棄された空家等に対応
※所有者に代わり財産を管理・処分。 (注)民法上は利害関係人のみ請求可
3.改正法案の目標と効果
①空家等活用促進区域の指定数: 施行後5年間で100区域
②空家等管理活用支援法人の指定数:施行後5年間で120法人
③市区町村の取組により管理や除却等された管理不全空家及び特定空家数:施行後5年間で15万物件
4.まとめ
今回の閣議決定された改正法案の施行日は、ニュース等では2023年度内を目指すそうです。民法上で、管理や処分の申請ができるのは利害関係人のみでしたが、財産管理人の選任を市区町村長にも認める箇所は非常にいいと思いました。
ある相続登記で、父親死亡で自宅を相続した方から、この家、「旗地」にあるから立て替えれないのはご存知なようで、建て替えれないから誰も活用してくれないよ、と嘆かれていました。「安全確保等を前提に接道に係る前面道路の幅員規制を合理化」とありましたので、もし該当地区になれば、活用の範囲も広がってくると感じました。
法改正により、今後の空き家対策に期待したいと思います。