「[業を継ぐ]地銀、事業承継の支援強化…ファンドや専門会社設立」(読売新聞記事引用)

2022年12月19日

本格的に金融機関が事業承継に参加し始めました。

地銀が、事業承継事業に本格的に乗り出してきそうな予感はしていました。なぜなら、一般の事業承継・M&Aのアドバイザリー(事業承継をコーディナネートする個人・企業)業務では、金融機関の協力なしに、情報を収集することは困難だと考えていたからです。裏を返せば、事業承継を望む会社の情報は、取引金融機関が一番保有しているということが言えると思います。銀行業務検定の「事業承継アドバイザー(BSA)」のカリキュラムでは、その情報提供及び秘密保持契約を締結して、アドバイザリーから金融機関が報酬を請求するスキームの提案をしていましたが、その金融機関が本格的に参入となれば、今のアドバイザリー業は衰退するでしょうね。しかし、事業承継を望む企業にはメリットもあります。それは、金融機関は財務省等の官庁の監査を受けているので、トラブル防止には、とても良い選択だと思います。現に、中小企業庁では、アドバイザリーの登録制度や、行き過ぎたアドバイザリーの報告制度、罰則を定めていますが、未だトラブルが無くならないのが現状です。こういった状況を踏まえても、金融機関が直接乗り出してくることは、大体予想できていました。

FAも、金融機関FA業務も、基本的に同じなのですが、その流れを見ていきましょう。

(図 鹿児島銀行HP引用)

図の中で、無料と有料の個所がありますが、これも一般的には同じです。ほとんどの業者が「成功報酬型」にしています。ゆえに、無理なM&Aを強行してしまう要因にもなるのですが・・・・。

今回の鹿児島銀行の「事業承継アドバイザリー(FA)」は、どこまで関与して事業承継を進めていくのかを見ていきます。

(図 各種 範囲)◎専属 〇関与 △ある程度関与 ×関与できない

つまり、FA(ファイナンシャルアドバイザリー)は、全ての手続きに関与することになります。一般のFAと名乗っていても、買収資金調達には関与していない場合には、FAではなく「M&Aアドバイザー」になります。また、プラットフォーム提供のみで、アドバイスをしない場合には「ブローカー」という区分になります。

(読売新聞記事写真引用)

そして、なんといっても今回の鹿児島銀行の特長は、「資金調達方法」にあると思います。「サーチファンド」形式と「投資ファンド」形式をとっていますがどちらも「ファンド」形式となっています。銀行単体での融資で実行するのではなくファンド形式にすることにより、より資金調達を柔軟にする狙いがあるものと考えられますね。また、資金調達と人材紹介・派遣がセットになっているのもメリットだと考えます。なぜなら、規模の小さいスモールM&Aでは、人に買い手が欲しい技術やノウハウがついていることが多いため、現経営者が事業を売却するにあたり、その人材が抜けると、ただの箱を買ってしまう恐れがあるためです。外部人材付きで買った場合、売却元会社の人材が抜けても、事業継続不能のリスクは避けることができますからね。

ところで、各地方の商工会議所内にある「事業承継・引継センター」が存在していますが、金融機関OBの方が多数含まれています。各種税制優遇措置等を受けるためには認証が必要となるのですが、金融機関経由で話があれば、「事業承継・引継センター」への届出をしていただけると思います。もちろんFAであれば、税制優遇措置の提案するはずですので、「事業承継・引継センター」への届出はしていると思います。

以前にもブログに書きましたが、2025年問題をクリアするために、中小企業庁は目標件数を設定し、積極的にM&Aの活用を推進しています。そんな中で、金融機関の選択肢ができたことは、とてもいいことだと思います。

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