【第3回】相続財産の“見えない資産”に注意! 名義預金・共有名義・未登記不動産の落とし穴

2025年10月09日

相続手続きでは、預金や不動産といった目に見える財産だけでなく、**一見すると他人名義になっているが実質的には被相続人のものといえる財産=「見えない資産」**の取り扱いが問題になるケースがあります。

代表的なものに「名義預金」や「共有名義不動産」、「未登記の家屋」などがありますが、これらを正確に把握せずに相続を進めると、相続税の申告漏れや遺産分割トラブル、登記の不備など、さまざまな問題に発展しかねません。

本記事では、相続実務においてしばしば問題となる「見えない相続財産」の実例とその確認・対応方法について、司法書士の視点から詳しく解説します。

目次

  1. 「見えない相続財産」とは何か?
  2. 名義預金の問題点と税務上の取扱い
  3. 共有名義不動産のリスクと解決方法
  4. 未登記建物の相続と登記手続きの注意点
  5. 生前贈与か?相続財産か?線引きの難しさ
  6. 争わない相続のために必要な準備とは
  7. 【CTA】見えにくい財産こそ専門家の力を

1. 「見えない相続財産」とは何か?

 「見えない相続財産」とは、帳簿や登記上は被相続人名義でないために、表面上は相続財産に見えないが、実質的には被相続人に帰属する財産のことです。

例えば以下のようなケースが該当します:

  • 子ども名義の預金口座に、長年親が入金していた(名義預金)
  • 被相続人と子が共同で登記していたが、実際には被相続人が全額出資(共有名義の不動産)
  • 建物の所有権登記がされていない(未登記建物)

これらは発見しづらく、相続人間での認識のズレや課税リスクの温床にもなり得ます。

2. 名義預金の問題点と税務上の取扱い

 名義預金とは、形式上は子や配偶者などの名義になっている預金でも、実質的には被相続人が資金を出して管理していた預金のことです。

たとえば:

  • 「お年玉や入学祝い名目で親が積み立てていた口座」
  • 「成人後も親が通帳・印鑑を保管し、出入金していた預金」

 このようなケースは、名義人の預金ではなく被相続人の財産とみなされ、相続税の対象になります。税務調査でも問題にされやすいポイントのひとつです。

【対処法】

  • 名義口座に対する入金元・通帳管理者を確認
  • 贈与契約の有無(贈与税の申告履歴)を確認
  • 生前贈与であることを主張するには、明確な証拠が必要

3. 共有名義不動産のリスクと解決方法

 親と子の共有名義で登記されている不動産も、実態を見直す必要があります。よくあるのが、親が全額出資して家を建てたが、「税金対策」や「将来の相続を見据えて」子と共有名義にしたケースです。

しかし:

  • 実質的な出資割合と登記割合が一致していない
  • 相続時、子の持分が「贈与」と判断される可能性
  • 相続人間で「この土地は誰のものか」で争いになる

【対応策】

  • 出資割合や実際の使用状況の記録を残す
  • 必要に応じて持分移転や贈与契約の見直し
  • 相続後の共有状態を避けるため、事前に遺言で整理

4. 未登記建物の相続と登記手続きの注意点

 田舎の実家などでよくあるのが、**建物が登記されていない(未登記建物)**ケースです。
 これは、固定資産税の課税はされているのに、登記簿上は存在しない状態です。

未登記建物は相続の際に問題になります:

  • 相続登記ができない(まずは表題登記が必要)
  • 他の不動産と一緒に処分しにくい
  • 所有権の所在が不明確で第三者に説明できない

【解決方法】

  • 固定資産税の課税台帳で存在を確認
  • 相続人のうち代表者名義で所有権保存登記を実施
  • 他の相続財産と合わせて遺産分割協議書に明記

5. 生前贈与か?相続財産か?線引きの難しさ

 特に名義預金や共有名義不動産では、「生前贈与だった」と主張されることもありますが、税務署はそれを安易に認めません。

贈与と認められるためには:

  • 贈与者・受贈者双方の意思表示がある
  • 通帳・印鑑の管理が名義人側にあった
  • 贈与税の申告がされていた、または110万円以下の記録がある

 これらの要件が揃っていないと、「名義だけ借りていたにすぎない」と判断され、相続税の課税対象とされるリスクがあるのです。

6. 争わない相続のために必要な準備とは

 こうした"見えない財産"は、家族間のコミュニケーション不足や誤解が原因で争いに発展しやすいポイントです。

だからこそ、被相続人が生前のうちに:

  • 財産目録を作成して共有
  • 遺言書で名義の整理を明記
  • 司法書士・税理士と連携しながら財産の見える化を進める

といった取り組みが必要です。
 また、相続人としては「形式ではなく実態を重視する」視点をもって、客観的に判断し、専門家の助言を得ながら整理していくことが求められます。

7. 【CTA】見えにくい財産こそ専門家の力を

名義預金や共有名義の不動産、未登記建物など、相続における"グレーゾーン"の財産は、放置しておくと後々の相続トラブルや税務調査の火種になりかねません。

✅ 親の通帳を管理していたが、名義は子どもだった
✅ 実家の建物が登記されているか分からない
✅ 相続人同士で財産の所在にズレがある

こうした不安がある方は、司法書士・税理士など専門家のサポートを早めに受けることで、リスクを未然に防ぎ、公平で円満な相続を実現できます。

アイリス国際司法書士・行政書士事務所
司法書士・行政書士 橋本大輔
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